アルフォスの誕生とアルゴリズムの職人・森田和郎
~ゼビウスをパソコンで再現したい~
今回は、
『ゼビウス』をパソコンで再現したい、『アルフォス』の誕生とアルゴリズムの職人『森田和郎』
をご紹介します。
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パソコンで『ゼビウス』?
そう、アーケードゲーム『ゼビウス』が登場した1983年頃、
自宅のパソコンで『ゼビウス』のようなシューティングゲームを楽しむことは不可能だと言われていたんだ。
そうなの?
パソコンは、まだ黎明期の時代。
アーケードゲームのような、滑らかな動きをする『シューティング』は再現できないと・・
そんな、1983年6月にパソコン(PC-8801)から驚きのゲームが発売される。
それが、『アルフォス』なんだ。
そんなに『アルフォス』って、画期的だったの?
それでは、『ゼビウス』の発表から、『アルフォス』の登場までを見てゆこう。
『ゼビウス』の登場
1983年1月ナムコから『ゼビウス』がアーケードゲームとして発表される。
『ゼビウス』は、その美しいグラフィックス、サウンド、
そして、その圧倒的な『世界観』でゲーム業界の歴史を塗り替える、大ヒット作品に。
その頃、家庭用ゲーム業界はまだ存在していない、
1983年7月の任天堂『ファミコン』の登場で、一気に花開くことになる。
アーケード版『ゼビウス』が発表された時はまだ、
『ファミコン』は登場してなかったんだね。
ファミコン版の『ゼビウス』が発売されるのは、
1984年11月だから
ファミコンで『ゼビウス』が遊べるようになるには、1年半以上待たねばならなかたんだ。
うー『ゼビウス』がプレイしたーい。
うー当時コペンは、小学生だったから『ゼビウス』で遊べるのは『夢のまた夢』だったよ。
その頃自宅で、ゲームを楽しむことができるのは、パソコンしかなかった時代。
お兄さんたちパソコンユーザーにも
『ゼビウス』を自宅のパソコンでプレイしたいというニーズが生まれ始める。
しかし、それは『叶わぬ夢』であった。
なんで?
パソコンは、まだ黎明期の時代。
1983から86年頃のパソコンには、画面をなめらかに動かすための
『ハードウェアスクロール』機能や『スプライト』技術は搭載されていなかった。
ということは、
『ゼビウス』のような滑らかな動きをする『シューティングゲーム』は再現できないってこと?
そうなんだ。
当時、ゲームで遊ぶなら、
ゲームセンターの『アーケードゲーム』か
自宅でパソコンゲームで遊ぶ方法しか選択肢がなかった。
(ゲームウォッチは別)
この頃の、ゲームの王様といえば。
アーケードゲームだったんだ。
アーケードゲーム業界では『ギャラクシアン』『ギャラガ』『マッピー』など
『スプライト』技術を利用した、スムーズで美しいグラフィック表現が実現できていたんだ。
一方のパソコンゲームは『アドベンチャーゲーム』や『RPG』など
テキストや静止画を利用した、ゲームが発達していったんだ。
アーケードゲームのような、動きの激しいアクションゲームは、苦手だったんだ。
この頃の、ゲームの王様はアーケードゲーム。
シューティングゲームの最高峰『ゼビウス』をパソコンで再現するなど不可能・・・
たしかに、アーケードゲームなら筐体に高性能なチップを載せられるもんね。
そうだね、アーケードゲーム機はゲーム専用機だし。
売上のメドがたてば筐体に数十万の費用を投入できるからね。
パソコンは、コストを抑えながらも、なんでもできる汎用機だもんね。
ところが、『ゼビウス』が発表された半年後の
1983年6月にパソコン(PC-8801)からアクションシューティングゲーム
『アルフォス』が発売される。
パソコンで再現不可能といわれた、アクションシューティングゲームを
作り出したのは
パソコン・ゲーム業界で、天才プログラマーとして名の知れていた
『森田和郎』さんだった。
『森田和郎』さん? だれ
天才職人プログラマー森田和郎とは?
森田和郎は、1955年、富山県に生まれる。
本業は医学生で、将棋、囲碁、オセロの段位を保有する一方、パソコンにも熱中し、プログラムの講師を努めることもあった。
森田将棋等の高度なプログラム技術に裏打ちされた思考系ゲームを得意としていたプログラマ。
あー、森田さんと言えば。
エニックスのゲームコンテストで優勝した人?
そうだね、あの『ドラゴンクエスト』が誕生するきっかけとなった、
エニックス主催の『ゲーム・ホビープログラムコンテスト』の優勝者だよ。
まあ、『ゲームコンテスト』の前から、
パソコン・ゲーム業界では、『森田和郎』は天才プログラマーとして有名だったんだけどね。
『エニックス』が、わざわざ『ゲームコンテスト』への参加をお願いしに行ったくらいなんだ。
この頃から、森田さんと『エニックス』はパソコゲーム販売で親密になってゆくんだ。
アクションシューティングゲーム『アルフォス』も『エニックス』からの要望で、開発、発売されたんだよ。
『アルフォス』の影に『エニックス』ありですかー。
森田さんは、『エニックス』から
『ゼビウス』のようなスクロールシューティングの制作を依頼を受けるんだ。
しかし、スクロールシューティングをパソコンで再現することは、不可能とされていた。
当時のパソコンでは、画面をスクロールさせるためには全画面の書き換えが必要なので、恐ろしく難易度が高かったのだ。
森田さんにとっては、不可能と言われているからこそ、
『挑戦するしがいがある』と奮起するんだ。
ここで、森田さんが不可能と言われていたゲームに
『なぜ挑戦したのか』
を知ることできるインタビュー記事があるので見てみよう。
森田さんの人柄や創作姿勢を伺わせるインタビューだよ。
『森田和郎』アルゴリズムに拘り続けた職人プログラマー
できないと信じられているコトをしてみるのが趣味なんです
もともと僕は、『ゲームデザイナー』じゃなくて、『ゲームプログラマー』だと思うんですよ。
『ゲームをデザイン』するのはあまり得意じゃありませんからね。
僕は『プログラムテクニック』で勝負するタイプなんです。
できないと信じられているコトをしてみるのが趣味なんですね。
だから、それが話題になってウケたりすると、ほんと嬉しいですね。
アルゴリズムをつきつめる
まず、プログラムの書き方にはちょっと工夫してますよ。
たとえばループをほとんど使わないとかね。
ループというのは『BASIC』でいえば『FOR ~ NEXT』にあたるんですけど、あれはずいぶん馬鹿らしいですよ。
回数をカウントして、ジャンプするわけですからね。
ものすごい時間のロスなんです。
たとえばZ80系のマシン語では、この2つの命令だけで13クロックかかります。
時間にして、約3マイクロセカンドなんですが、これはかなり大きな数字なんです。
100万回実行すれば、3秒も違ってくるわけですからね。
まァ実生活レベルでは問題にならない程度の遅れですが、
ゲームとなると致命的ですね。
やはり『アクションゲーム』の場合は速くないと意味がないですから、その点を切り詰めないと、どうしようもないんですよ。
速くするためのアルゴリズムを、つきつめて考えないとね。
出来ないこと、出来るようにする
ボクは元来、目立ちたがり屋の方ですから、
みんなができない、できないといっていることに興味を持つんですよ。
どうにかして鼻を明かしてやろうってね。
たとえば、“ポールポジション”タイプの高速スクロールゲームですけど、これなんかも、やってできないことはない。
いや、おそらく可能だと思いますよ。
X1なんかのマシンを使えば、比較的簡単に作ることができると思うんですよね。
ボクがあえて作ろうとしないのは、他の誰かがそのうち作るだろうと思っていたせいもあるんですが、……、でも、どうして誰も作らないんでしょうね。
ほんと、不思議ですねェ。
森田さんにとって、『出来ないことを、出来るようにすること』がやりがいなんだね。
だから、実現不可能といわれた、『スクロールシューティング』をパソコンで再現してやろうと思ったんですね。
そうなんだ。
森田さんは『スクロール』や『スプライト』機能がない、
パソコンでは
画面をスクロールさせるためには全画面の書き換えが必要という課題を
『アルフォス』では、
1プレーンだけを使ってスクロールする、1プレーンだけに『敵』を書き込み
重なっても色が変わらないようにパレットを制御する技法を思い付いたんだ。
そして、画面表示の高速化に成功したんだ。
まさに、アルゴリズムの職人ですね。
『アルフォス』の登場より、パソコン・ゲーム業界に衝撃が走る。
パソコンでも、『スクロールアクションゲーム』が作れるかもしれない
『アルフォス』の登場以降、『スクロールアクションゲーム』に挑戦するプログラマーが次々と現れるんだ。
その後、『アクションRPG』や『アクションシューティングゲーム』が次々と登場するんだ。
『ナムコ』コピーライトが挿入
森田さんの開発した『アルフォス』は、
『ゼビウス』に影響を受けた縦スクロールシューティングであり、
内容をそのまま移植したコピーゲームではないものの、
エニックスの意向により、
ゲーム画面にナムコの『コピーライト』が挿入されている。
後に『エニックス』は『ナムコ』の許諾を得て、
『PC-8801』および『PC-9801』に『ゼビウス』を移植しているよ。
ちなみに、
なお『PC-8801』版の制作者はパソコン・ゲーム業界で有名なプログラマー『芸夢狂人』。
移植の許可を得たにも関わらず、
ナムコからはデータを一切もらえなかったので、
ゲーム雑誌等の関連本を参照して開発したそうです。
ナムコ冷たいー。
『ゼビウス』の生みの親である、遠藤雅伸さんは
『アルフォス』は、
『ゼビウス』のコピーなんかじゃなく、
オリジナルの新しいゲームだと思いますよ。
その後、パソコン雑誌『ログイン』の「読者が選ぶトップ20」では、
森田和郎の『アルフォス』が1983年のトップを獲得する。
プログラマーは「蛇口」
最後に、任天堂の前社長であり、プログラマーだった岩田聡のコメントをご紹介します。
自らもHAL研究所のプログラマーだった岩田聡(前任天堂社長)は、
プログラマーを『蛇口』に例えていた。
ゲームデザインのアイディアは『水』である。
だが、『蛇口』が小さいと水は流れていかない。
どれだけ優れたアイディアがあっても、プログラマーに力量がないと、つまらないゲームしかできない。
『森田和郎』は『できない』と言われていることをやって見せるのが楽しいという。
言わば、無尽蔵の水を流せる『蛇口』なのだ。
『森田和郎』は、不可能を可能にする、生粋のプログラマーであった。
黎明期のパソコンゲーム制作で名を馳せたプログラマーは、
徐々にソフトのプロデュースや会社経営に軸足を移し、
プログラムからは身を引く人物が多かったが、
『森田和郎』は後年も第一線のプログラマーとしてゲーム制作に携わっていた。
『森田和郎』がコンピューターゲームに遺した影響は大きい。
森田和郎氏は長年に渡ってプログラマーとしてゲームソフトの制作に携わっていましたが、2012年に57歳という若さで逝去されました。
訃報は将棋専門誌や大手メディアでも報道され、多くの方々が森田氏のあまりにも早過ぎる死を悼みました。
ご冥福をお祈りします。
今回はここまで、
次回は、『ゼビウス』の都市伝説と隠しキャラ
ご閲覧ありがとうございました。
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