第3回ナムコの波形メモリ音源の系譜
~ゼビウス・ディグダグ・サウンドの生みの親、慶野由利子~
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今回は、いよいよ新しい基板が登場し、新『波形メモリ音源』チップ が登場するよ。
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『ゼビウス』『ディグダグ』サウンドの生みの親『慶野由利子』の証言を見てみよう。
新『基板』では、波形メモリ音源『C15』を採用
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1982年の『スーパーパックマン』と1983年の『パック&パル』は,
『ディグダグ』や『ゼビウス』とほぼ同時期に作られたんです。
『スーパーパックマン』と『パック&パル』の基板には『16ビットCPU』と
任意波形音を『8音』同時に発することが可能な、波形メモリ音源『C15』が搭載されているんです。
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この新しい基板では、
『効果音』が鳴ってもBGMが途切れないです。
それに、『1つの旋律』を『複数の音』で奏でることもできるようになったんです。
あと、新しい基板の『C15』を使った、1983年の『フォゾン』と1984年の『グロブダー』も作曲しましたね。
そして、波形メモリ音源『C30』の登場
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1984年の『パックランド』の基板には,
私も開発に関わったのですが、
新型の波形メモリ音源『C30』が搭載されたんです。
『C30』では,『ノイズ』も『サウンドプログラム』で扱えるようになったんです。
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でも,『ゴースト』がさまざまな登場の仕方をするので,
『8音』では音が足りなくなってしまって
ここでも『ディグダグ』や『ゼビウス』の時と同じように、
どの音を優先して出すかパズルのように組み立てていましたね。
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これは補足になるのですが、
『パックランド』はもともとアメリカで放映された
1982年のテレビアニメ『Pac-Man』をゲーム化したものなんです。
テレビアニメ『Pac-Man』は『トムとジェリー』で知られる『ハンナ・バーベラ・プロダクション』が制作していて,
ゲーム版のBGMもアニメ版がベースになっているんです。
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でも、アニメ版の譜面がなかなか届かなかったので、
実際にアニメを観てながら耳コピして作曲しましたよ。
『ドラゴンバスター』の登場
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1985年の『ドラゴンバスター』は『パックランド』に先駆けて開発が進められたんです
実は、新しい『波形メモリ音源』の『C30』ではじめて作曲したタイトルなんです。
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『ドラゴンバスター』は、プロトタイプの時点では
『ドラゴン』が羽ばたくときの『効果音』を作ったんです。
『ドラゴン』が羽ばたき『音』は、とってもお気に入りだったのですが、
後にドラゴンの羽ばたき自体がなくなり,『効果音』もお蔵入りになってしまったんです。
お気に入りの『効果音』だったので残念ですね。
『ドラゴンバスター』は『ドラゴンクエスト』?
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『ドラゴンバスター』について補足すると、
ゲームタイトルは最初決める時に『ドラゴンクエスト』も候補にあったんですよ。
まさか、その後『ドラゴンクエスト』というゲームが登場するとは、夢にも思いませんでしたけど・・
『バラデューク』『慶野由利子』ナムコ正社員時代最後のタイトル
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1985年の『バラデューク』は,
私がナムコ正社員時代最後のタイトルなんです。
当初は、2月くらいに『マスターアップ』する予定だったのですが,
ズルズルと伸びてしまい,結局完成しないまま3月にナムコを退社することになりました。
完成まで、立ち会えなくて残念です。
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『慶野由利子』さんは、
1985年に二人目のお子さんを出産を機に一度退社しているんだ。
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子供二人の育児と仕事の両立は、大変だもんね。
『慶野由利子』『ナムコ』に復帰、『FM音源』登場
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『慶野由利子』さんは、出産後
『ナムコ』から
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『慶野由利子』さん、是非戻ってきて下さい、お願いします。
正社員では、育児と仕事両立が大変だと思いますので
契約社員ではどうでしょうか?
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ということで、『慶野由利子』さんは
『契約社員』として再び『ナムコ』に復帰することになるんだ。
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1987年の『パックマニア』は,私の『ナムコ』復帰第1作目のなるのです、
それに『FM音源』を使った1作目でもあるんですよ。
『FM音源』になり作曲しやすくなってゆくんですけど、
『プロ野球ワールドスタジアム』と『プロテニスワールドコート』は,リアルスポーツを扱うゲームなので,制約が多くとても大変でしたね。
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『慶野由利子』さんは、1987年から1989年まで、
契約社員として『ナムコ』のゲーム音楽制作を担当したんだよ。
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『慶野由利子』さん、ありがとうございました。
『FM音源』登場と『カプコン』の『戦場の狼』
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1985年頃になると『FM音源』が登場するんだ。
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まず、最新の『FM音源』導入の先頭を切ったのが
『1942』や『エグゼドエグゼス』など、
名作シューティングをヒットさせて力をつけてきた
『カプコン』
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『カプコン』は
1985年5月、
ライバルのアーケードゲーム他社より半年ほど
先行して
『FM音源』を搭載した『戦場の狼』を発表するんだ。
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おー、戦場の狼。懐かしい
『セガ』の『ハングオン』登場
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『セガ』も同年の1985年7月
『FM音源』を搭載した
『ハングオン』でを発表する。
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おー『セガ』
『ハングオン』と言えば、
ゲームクリエイターの『鈴木裕』の作品だね。
勢いが止まらない『セガ』の躍進
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同年、1985年11月にはトドメとばかりに『セガ』は
『FM音源』を搭載した。
『スペースハリアー』を発表。
そして、翌年1986年には
3月『ファンタジーゾーン』
4月『カルテット』
9月『アウトラン』
と、ゲーム音楽の名作と言われるタイトルを次々連発します。
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おー、『ナムコ』と『コナミ』が『セガ』押されているー。
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1980年代はじめに『ビデオゲーム』参入に遅れた『セガ』だけど
1980年中頃には、勢いを取り戻した感じだね。
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この頃には、『セガ』は
アーケードゲーム界では、『ナムコ』『コナミ』『カプコン』と戦い
家庭用ゲーム界では、『任天堂』と戦っているね。
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まるで『ラオウ』だね。
ようやく『ナムコ』と『コナミ』・『FM音源』導入
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『波形メモリ音源』の採用で『ゲームサウンド』リードしてきた
『ナムコ』、そして『コナミ』も
ようやく
1986年4月に『スカイキッドDX』で
ナムコが『FM音源』を搭載してきます。
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『コナミ』も遅ればせながら
1986年7月に『沙羅曼蛇』で『FM音源』デビュー。
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こうして、アーケードゲーム業界は
『FM音源』の時代へ移っていたんだ。
謎が解けた、『ナムコ』の『波形メモリ音源』の系譜
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ここで、『慶野由利子』さんの証言をまとめてみよう。
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1982年の発表の『ディグダグ』
1983年の『ゼビウス』の頃は、
『任意波形発生回路』、通称『パックマン音源』を採用していたんだね。
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この頃の『同時音数』は『BGM』と『効果音』をお合わせて『3音』まで
『ディグダグ』では、『ノイズ音なし』バージョンを利用していて、
『ゼビウス』では、『ノイズ音あり』バージョンを採用していた。
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でも、『ノイズ音』は『メインプログラム』でしか利用できないから
『効果音』の『爆発音』に利用していた。
『波形メモリ音源』『C15』と『C30』の採用時期は?
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『C15』の採用時期は?
1982年発表の『スーパーパックマン』と1983年の『パック&パル』から
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『C30』の採用時期は?
1984年発表の『パックランド』、1985年のから『ドラゴンバスター』
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発売順に並べるとこんな感じ。
『ナムコ』年代別ゲームタイトル
発表年 | 制作開始 | ゲームタイトル | 音源 |
1982年 | 1981年 | 『ディグダグ』 | 『パックマン音源』 |
1982年 | 『スーパーパックマン』 | 『C15』 | |
1983年 | 『ゼビウス』 | 『パックマン音源』 | |
『パック&パル』 | 『C15』 | ||
1984年 | 1983年 | 『パックランド』 | 『C30』 |
1985年 | 『ドラゴンバスター』 |
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こうしてみると、ゲームタイトルの発表時期と
実際に最新『音源』の採用時期は、違うんだね。
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ゲームタイトルの発表時期が遅いからと言って、
最新の『音源』が採用されているとは限らないってことだね。
1980年代はじめの『ナムコ』のゲーム開発
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ここで、『慶野由利子』さんの証言を元に
『ナムコ』のゲーム開発状況を整理してみよう。
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『慶野由利子』さんは、
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1982年の『スーパーパックマン』と1983年の『パック&パル』は,
『ディグダグ』や『ゼビウス』とほぼ同時期に作られたんです。
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って述べられいるね。
そして、
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1985年の『ドラゴンバスター』は『パックランド』に先駆けて開発が進められたんです
実は、新しい『波形メモリ音源』の『C30』ではじめて作曲したタイトルなんです。
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『ディグダグ』『ゼビウス』『スーパーパックマン』『パック&パル』は、
ほぼ同時期に制作がはじまったことになるね。
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それに、『ドラゴンバスター』は『パックランド』より先駆けて制作された。
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これを一覧にすると。
ゲームタイトル | 音源 | 1982 | 1983 | 1984 | 1985 |
『ディグダグ』 | パックマン音源 | 制作 | |||
『ゼビウス』 | 制作 | ||||
『スーパーパックマン』 | C15 | 制作 | |||
『パック&パル』 | 制作 | ||||
『パックランド』 | C30 | 制作 | |||
『ドラゴンバスター』 | 制作 |
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こうして見ると、
『ゼビウス』と『ドラゴンバスター』は開発期間が長かったんですね。
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『ゼビウス』は、
初の『スクロール式・アクションゲーム』、
『ナムコ』の『スクランブル』に対抗するために企画されたのが、
はじまりだからね。
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『ゼビウス』の制作開始は、『シャイアン』というゲーム企画からの期間だから
制作期間が長くなっているだね。
『波形メモリ音源』『C15』の採用
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1982年には、新しい『波形メモリ音源』『C15』を導入しているんですね。
そして、わずか1年で
『C30』を『ドラゴンバスター』に搭載しているね。
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そうだね。
『ドラゴンバスター』は制作期間が長くなってしまったから、
初の『C30』登場作品とはならなかったんだね。
結論『ナムコ』の『波形メモリ音源』の系譜
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これで、『ゼビウス』の『音源』は『C15』説は、間違いってことですかね。
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そうだね。
以前紹介した、2つの説をご紹介すると。
『波形メモリ音源』の2つの説
年 | ゲームタイトル | パターン1説 (間違い) |
パターン2節 (正解) |
1980~1983年頃 | パックマン ギャラガ ディグダグ ゼビウス |
C15 | チップ化してない 『パックマン音源』 |
1984年頃 | マッピー ドルアーガの塔 |
C15 (チップ化) | |
1985年頃 | ドラゴンバスター | C30 | C30 |
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2説目が正しいってことですね。
『パックマン』『ギャラガ』『ディグダグ』『ゼビウス』では、
『任意波形発生回路』、通称『パックマン音源』を採用していた。
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そして、BGMと『効果音』を含めて、同時音数は『3音』の音源。
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ただ『ファミコン』などの『PSG音源系』と比べて
その『3音』は、それぞれの『音色』を作ることができたから
他社では真似できない『ナムコ』独自の『音』が表現できた。
ってことですかね。
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そうだね。
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これで、『ゼビウス』『ディグダグ』の音の秘密が解決したような気がします。
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1980年代はじめの『ナムコサウンド』の魅力についてもね。
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今回はここまで、
次回も引き続き、『慶野由利子』さんの貴重な『ナムコサウンド』の証言をお送りします。
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