【第2世代レイバー】『機動警察パトレイバー：98式AVイングラム開発史』第2世代レイバーの誕生のご紹介

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今回は、『機動警察パトレイバー：98式AVイングラム開発史』第2世代レイバーの誕生をご紹介します。

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ハイパーテクノロジーの急速な発展と共に、あらゆる分野に進出した多足歩行式作業機械「レイバー」。
しかし、それは「レイバー犯罪」と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出すことになった。
続発するレイバー犯罪に、警視庁は本庁警備部内に特科車両二課を創設して、これに対抗した。

通称「特車二課」パトロールレイバー中隊パトレイバーの誕生である。

『機動警察パトレイバー：98式AVイングラム開発史』第2世代レイバーの誕生をご紹介します。

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SIR-90の成功を受け、篠原重工は研究開発を加速させた。1992年6月には生産性を高めるべく多額の投資を行い、所沢、八王子両工場の改装を実施。

実山剛を八王子工場の工場長に据え、SIR-90の増産を進める一方で、SIR-90の開発チームには廉価版となる新型レイバーを開発するように命じている。

こうして1993年10月にリリースされたのが、三足歩行式レイバー・KV-98「ぴっけるくん」であった。山岳地帯における作業に用途を絞ることで、マニピュレーターを廃止したこのレイバーは、本体価格をSIR-90の約半分となる1億5千万円にまで抑えることに成功したこともあり、低価格のエントリーモデルとして大ヒットを飛ばすこととなった。

もちろん、篠原重工以外のメーカーも手をこまねいていたわけではない。SIR-90に続けとばかりに各社が一斉にレイバー開発へと乗り出し、1990年代半ばには早くもレイバー産業は競争過熱の時代へと突入しているのだ。

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その先鋒を務めたのは重工業界の雄、菱井インダストリーである。篠原重工に遅れること2年となる1994年4月、菱井インダストリーは初のレイバーとなるHL-9「ギガント1000」を発表。四足式の下半身に、2本1対のマニピュレーターを有するというコンセプトは、SIR-90を模倣したものに過ぎなかったが、豊富なオプションによる汎用性の高さに加え、扱い易い操作性が好評を博し、順調に販売数を伸ばしていくことになった。

現在ではこれらのベストセラー車種を以てレイバー第2世代の成立と見なしている。しかし、この時期にレイバー産業へ参入したマナベ重工やシャフト・エンタープライズは、第1号レイバーを発表したものの販売は振るわず、苦戦を強いられることとなる。

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このままレイバー産業は、篠原重工と菱井インダストリーの2社によって席巻されるのかと思われた時、思わぬところから新勢力が現れる。かつて飛鳥重機に所属していた技術者たちが中心となって立ち上げたベンチャー企業「株式会社アスカ」が、突如として二足歩行式レイバーのコンセプトモデル・SSL-Xを発表したのである。

当時、正式発表は行われていなかったが篠原重工と井インダストリーの両社では、すでに二足歩行式レイバーの実用化に向けて動き出していた。それだけに新興のベンチャー企業に先を越されたショックは相当なものであったという。特に篠原重工の、というよりも篠原一馬社長の反応は強烈なものであった。

そもそも篠原重工が飛鳥重機を吸収合併したのは、同社が予てより二足歩行機械の基礎研究を進めていたからに他ならず、その技術を手に入れたいがためであったのだ。

そして飛鳥重機の施設と従業員を中心として所沢工場を設立すると、密かに二足歩行式レイバー・SIR-X3の研究開発計画を立ち上げていたのである。そのような経緯があればこそ、一馬にとっては飛鳥重機の元従業員を中心とした株式会社アスカの動きは、すでに手に入れていたはずの技術を盗用したものと映ったようだ。直ちに法務部に命じて法的措置の準備に入ったことは言うまでもない。

これに慌てたのが飛鳥重機の元社長でもある所沢工場の工場長だ。かつての部下たちが、泥沼の法廷闘争の中で疲弊し、その才能や技術が潰されるところなど見たくはない。

彼は株式会社アスカの主要スタッフたちに連絡を取り、篠原重工への合流を促す説得交渉に動き出したのだという。

結果から言えば、この交渉は成功裏に終わり、篠原重工は訴状を取り下げると同時に、株式会社アスカを「SSL-Xの設計データ共々」丸呑みする形で吸収することになるのだった。

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1995年4月、篠原重工は所沢工場にて開発した二足歩行式レイバーSSL95「アスカ95」を発表した。それは、誰の目にもSSL-Xをベースとしたものであることは明らかであったが、篠原重工の広報部は堂々と〝自社開発であると謳ってみせた。愛「称に「アスカ」の名を冠しているのは、株式会社アスカのスタッフたちが見せた意地であったのだろう。

ところが、紆余曲折を経て史上初の一般販売用二足歩行式レイバーの称号を獲得し、華々しく「第2世代レイバー」としてデビューを飾ったSSLではあったが、いざ販売を開始するとトラブルが続出する。バランス制御における不具合を要因とする転倒事故が相次いだのだ。

SSL55は、脚部ユニットに圧力センサーと光学センサーを神経系のように配置し、接地環境の情報を取得しつつ、即座にコンピューターで解析を行うことで最適な姿勢を取るという新機軸のオート・バランサーが採用されていた。

しかし、その制御を行うソフトウェアに未熟な面があり、現実の複雑な環境に対応しきれなかったのである。

こうした状況を受けて篠原重工は、発売開始から間もなくSSLのリコールを決断。市場に出回っていたすべての車輛を回収した上で、新車の販売を無期限停止すると発表したのである。

所沢工場には、八王子工場のスタッフまでもが集められ、全社をあげて問題点の究明と改善策の検討が進められた。ほどなく、KV-33の三足歩行で用いられていた動的歩行技術を応用した改良型オート・バランサーへの交換が決まったが、いくつかの理由により、改修作業には時間を要することになる。

ひとつ目の理由は、1995年7月に発生した「東京湾中部地震」だ。習志野工場や八王子工場、更に中央研究所が被災し比較的被害の少なかった所沢工場で作業していたとはいえ未だ完全に復旧したとは言えない状況であったのである。

加えて同年11月には、篠原一馬社長の長男であり、優秀な研究員としても知られていた篠原一驥が交通事故により死亡するという不幸も重なった。篠原重工の跡取りと目されていた人物の死が与えた動揺は大きく、一時的に経営サイドにも混乱が見られたという。

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それでも、翌1996年2月には、どうにかSSL向けの改良型オート・バランサーが完成。安全対策を施した新モデルを、改めてSSL96〈アスカ96〉として発表し、同年10月より順次販売する運びとなった。

しかし、この時期のレイバー産業界にあって、年という空白期間は致命的だった。SSL95の販売停止から2か月後に、菱井インダストリーが大型二足歩行式レイバー・HL-96「タイラント2000」を発表、1995年12月から販売を開始し、本来、SSL95と分け合うはずだった市場を独占していたのである。

HL-96は居住性や運動性には課題を抱えていたものの、HL-94の売りであった多彩なオプション装備の付け替え機構をそのままに出力を1.5倍に引き上げており、パワフルかつ使い勝手のいい重機として確固たる地位を築いたのだ。

こうした背景もあってSSL96の販売数は伸び悩み、1990年代半ば以降におけるレイバーのシェア争いは、菱井インダストリーの優位で進展していったのである。

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