【前篇】ファミコン版・オホーツクに消ゆの誕生　～堀井雄二のアドベンチャーゲームの世界～

ログイン編集部の『S』です。

おーファミ坊か、元気ー。

『ポートピア連続殺人事件』発売おめでとうございます。

ありがとう、中村さん（プログラマー）のおかげでなんとか発売できたよ。

ヒットするといいけど・・・

実は、堀井さんにご相談があるんだ。

相談？

そう、ファミコンから『ポートピア』がめでたく発売できたことだし

第2弾で、『オホーツクに消ゆ』をファミコン移植してみません？

『オホーツク』を？

・・・・・

うーん、少し考えてみるよ。

そう、それじゃ考えておいて下さい。

・・・・

『ポートピア連続殺人事件』は、ファミコン初の『アドベンチャーゲーム』であり

『ゲームセンター』にあるようなゲームしか知らない『ファミコンユーザー』に

こんなゲームもあるんだということを知ってもらおう

よーし、次は『RPG』だ！

マニアックな『RPGゲーム』を『ファミコンユーザー』に受け入れられるようにするぞー。

いえーい、助かったぜー

はい、堀井です。

ログイン編集部の『S』です。

おーファミ坊か、『オホーツク』の件申し訳なかったね。

いやー、とんでもない。

『ドラゴンクエスト』が完成したって聞いたんだけど、

最近どうですか？

おかげ様で、『ドラゴンクエスト』も無事完成して

後は、発売を待つだけだよ。

堀井さん『ドラゴンクエスト』も完成したことだし

そろそろ、『オホーツク』、やっぱり『ファミコン』にしようよ

・・・・・・

ひえーー

僕には、人からなにか頼まれると、
嫌と言えない、性格的に、弱いところがあるんだ。

そんな僕だが、しかし

この『オホーツク』ファミコン移植計画には、
まだ首をたてに振らなかった。

もう既に、『RPGゲーム』2作目の『ドラゴンクエスト2』企画に入り、
忙しいというのも理由のひとつである。

しかし、それ以上に大きな理由は、

『僕自身が、アドベンチャーゲームというゲームシステムにすでに疑問を抱いていた』からなのである。

その疑問とは、一言で言ってしまうと、

『アドベンチャーゲーム』は遊んでいてかったるいのではないか？

ということ。

ゲームをやっていて、お話がどんどん進み次々と違った絵が見れるような局面では、
確かにワクワクするし面白いだろう。

しかし、ひとたび謎解きにつまるとお話がそこでピタリと止まってしまうと

もう何をしていいかわからず、どうやたって先へ進めない。

こうなってしまうと、やればやるほどイライラがつのっていく一方でなのだ。

もちろん、『ドラゴンクエスト』のようなRPGにも『謎は解きで詰まる』という現象はあるにはある。

しかし、PRGには『レベルを上げる』というロックがあるので、

謎自体は『アドベンチャーゲーム』ほど複雑にする必要がないのだ。

例え、謎につまったところで、

とりあえずレベルも上げておくか

というようなことがRPGではできる。

しかし、『アドベンチャーゲーム』にはそれがないのだ。

ゲームとして考えれば、やることがないより、
やることがあったほうが面白いにきまっているのだ。

しかも、『アドベンチャーゲーム』は、ストーリーに負う部分が大きい分

一度と解き終わってしまうと、それっきりなのである。

パソコンゲームならまだいい。

ユーザーはそれらのことを了解したうえで買うのだから。

だが、『ファミコン』は大部分が子供たちなのだ。

正直に言ってしますと、ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』を発売した後、

少数であるが、子供達からそういった苦情が届けられたのであった。

うーー

子供たちにとっては5500円というのは大変な大金である。

大人ならたとえ2日で解けてしまったとしても、
その2日間が十分楽しめればそれで満足してくれるであろう。

しかし、子供たちはそうではないのだ。

僕には、そのハガキを送ってきた子供の泣き声が見えてきたような気がした。

と、そんなこともあって
『オホーツクに消ゆ』ファミコン移植計画には、当初否定的だったのである。

しかし、ファミ坊は諦めなかった。

ファミ坊は、説得しにかかる。

どうしてそう『アドベンチャーゲーム』の悪い面ばかりを見つめるんですか？

『ポートピア』をやった大部分の人たちが、不満を感じているんですか?

確かにそんなことはなかった。

僕の願い通り、初めて『アドベンチャーゲーム』に接して感激してくれた人も多いよ。

だったらやりましょうよ。

もう『アドベンチャーゲーム』がどんな物かみんなが知っているわけですし、

今度は本当に『アドベンチャーゲーム』が好きだという人たちのために！

そうか、それもそうだな。

確かに少数ではあるが、RPGのレベルを上げる作業がめんどくさい

という人もいる。

純粋に謎解きだけに集中したいという人もいる。

たぶん、『オホーツクに消ゆ』をファミコン化しても、

『ドラゴンクエスト』ほどのヒット作にはならないだろう。

しかし、こういったゲームを求める人が存在し、
その人達が心から楽しんでくれるのなら、

やって見るだけの価値はある。

僕は、ついにOKした。

やりましょう！