【第2回】名作本格ミステリー・アドベンチャーゲーム、マンハッタンレクイエム・殺意の接吻とは

今回は、『J.Bハロルドシリーズ』の世界観を堪能できるように

2作目の『マンハッタンレクイエム』から

事件のはじまりから『刑事J.Bハロルド』が

事件解決のため『ニューヨーク』に旅立つまでの物語をご紹介します。

ある日、『J.B.』に一通の『手紙』が届いた｡

封筒にはニューヨークの消印と､懐かしい女の名前｡
中には､短い『手紙』と1枚の『カード』が入っていた｡

刑事さん､私のことを憶えてるかしら？

差出人は『サラ・シールズ』。

以前『リバティタウン』で起きた『ビル・ロビンズ殺害事件』の関係者だったピアニストだ。

数日後、『マンハッタン』で保険調査員をしている

元・相棒の『ジャド・グレゴリー』から衝撃の連絡が入る。

『サラ』が死んだ

自宅のアパートから転落し、ほぼ即死だったという。

警察は『自殺』と発表、捜査を打ち切ったようだが、
疑念を抱いた『J.B.』は『マンハッタン』へ向かっていた。

一体『マンハッタン』で彼女に何があったのか？

彼女が送ってきた『手紙』には何か意味があるのか？

そして捜査線上に浮かぶ2人目の『サラ・シールズ』

彼女もまた、自分の部屋から飛び降りていた……。

こいつは､ただの『自殺』じゃない｡

彼女の死には､何かが隠されている｡

『第1章　物語のはじまり』では、

この事件のはじまりから『『J・B』ハロルド』が『ニューヨーク』へ捜査に出発するまでの物語です。

夜のとばりが降り、外のざわめきが静まりかけた頃。

引き出しの中に横に寝かせていた『オールドテーラー』をとりだし、デスクの上に置く。

用意しておいた氷入りのグラスにとくとくとそそぎ込む。

芳醇な『オールドテーラー』の水面からはみ出た水を人差し指で少し動かす。

カランカランと水とグラスの触れ合う音がここちよい。

この音が物語の始まりを告げる。

日常的な事柄にまぎれて、ひとつの事件が起きる。

限られた情報を頼りに街を歩く。歩く。ひたすら真実を求めて歩く。

時には、登場する人物に恋愛に似た感情をもち、捜査に踏襲することもある。

時には、憎らしかった人物が、捜査が進行するにしたがい、

次第にいとおしくなることさえある。

複雑に絡み合う謎をときほぐし、その後に見つけ出した、たったひとつの真実。

この時ほど至福の時間を感じることはない。

事件を解決するのは言うまでもない。

私が楽しんでいるのは、その裏に隠されたさまざまな人間ドラマを垣間見ること。

『刑事J・B』になることで、哀しい人間たちが引きおこすドラマを見ることができる。

さあ、これからどんな事件が私を待ち受けているのか……。

その夜、私は『刑事J・Bハロルド』になった。

刑事さん、この『街』はとても気まぐれね。そして、その『街』に暮らすこの私も…..

硝子越しに見える『摩天楼』に陽が沈んでいく。

また、どこからか『パトカー』のサイレンが聞こえてくる時間になったようだ。

この街の夕暮れは、いつも『犯罪』の匂いから始まるようだ。

『J・B』久しぶりだ、元気でやっているか。

早いもので『リバティタウン』を離れて1年。心配をかけた体のほうも、もう無理はきかんがまずまずだ。

それにしても長年の刑事暮らしとおさらばした『第二の人生』が、こんな大都会での生活だったとは、我ながら思いもよらないことだった。

退院後、娘のジェーンから『マンハッタン』で一緒に暮らそうと言われた時にはずいぶん迷ったが、

今となってはこの『街』にきてよかったと思っている。

ジェーンの奴、初めはこの頑固親父がいつまでここで暮らせるかどうか、

心配でたまらんようだったが、近頃はやっとひと安心したらしい。

早くに女房を亡くしたせいで、あの娘には苦労ばかりかけてきたが、いつもやさしい笑顔でいてくれる。

本当のところ、こんな親父のことなど放っておいて、
誰かいい男とでも一緒になってくれればいいんだが。

今のところは、浮いた噂もなく『5番街』の市立図書館で働いているよ。

例の新しい仕事の方だが、おかげでなんとかやっていけそうだ。

この街では、保険の信用調査なんて看板で、なんとか食いつなげるだけの仕事がころがりこんでくる。

むろん、この仕事はは君と組んで『犯人』を追っていた時のような派手な『捜査』などあるはずもないが、

ただそれでも、誰の人生の裏側にも潜んでいる、

あの『意外な真実』ってやつだけには、ひょっこり出会えそうな、そんな予感がしている。

さて、挨拶はこれくらいにして本題に入ろう。

『J・B』、俺はその新しい仕事で、
ちょっとやっかいなことに首をつっこんでしまったらしい。

『サラ・シールズ』という名前の若い女、覚えているだろう。

そうだ、君が先立って担当した『ビル・ロビンズ殺害事件』、
あれで証言をしてくれたパブのピアニストだ。

その彼女が死んだ。

そう、この『マンハッタン』で、アパートの窓から落ちて死んだんだ。

今月9日の夜、その不幸な事件は起きた。

『サラ・シールズ』は、

3カ月ほど前から女友達とふたりで『ダウンタウン』のアパートに住んでいた。

その夜、『ルームメイト』の『フラニー・ビンセント』は
外泊していて、彼女はひとりだった。

そして真夜中、『サラ』は自分の部屋の窓から、5階下の路上に転落した。

もちろん、即死だった。

『サラ』の死体の『第一発見者』は、
彼女のアパートの向かいのビルの住民で『ディック・ベイカー』という男だ。

この男は、部屋の窓から『サラ』が飛ぶように落ちていくのを見たと証言している。

『ニューヨーク市警』の捜査によると、
事件当時、彼女の部屋に『訪問者』の気配はなく、部屋の中も荒らされた様子はなかった。

『ルームメイト』の『証言』では、盗まれたものもなかったらしい。

近所の聞き込みでも、不審な人物を見かけた者は出ず、
その時分にアパートの付近を『性格異常者』がうろついていたという情報も入ってなかった。

まあ、普通この状況からすると、彼女は自ら死を選んで飛び降りたと考えるのが、一番簡単な答えだろう。

ただこの一件には、それにしては気にかかる『謎』が残されていた。

まず第1に、『サラ』の部屋に残されていたある形跡。

それはまるで誰かがすがりついたかのように
激しく引き裂かれ床に落ちていた『カーテン』と、

古い木の『窓枠』に残っていた幾つかの『真新しい傷』だ。

そして第2に、

窓から落ちた『サラ』の右手に
しっかりと握りしめられていた小さな古いブリキの『オルゴール』
(これについては、『フラニー・ビンセント』は見たことがないと言っている)。

これは、いったい何を意味しているのだろうか。

そして、第3は、もっとも肝心な『サラ』の『自殺』の理由だ。

『遺書』や『書置き』らしきものは何も発見されなかった。

彼女は最近思い詰めた様子もなかったし、男にふられた話もなかった。

彼女のまわりの誰ひとりとして、その理由に心当たりのあるものはいなかった。

それどころか、彼女と翌日の食事の約束をしていた人間がいたくらいだ。

このように不明点が残るにも関わらず、
今のところ『捜査』は何しひとつ進んでいない。

いやそれどころか、『ニューヨーク市警』はこの一件について
まったく『捜査』をやってないのも同然だ。

どうやらこの『大都会の警察』には、
しがない酒場の女の事件などにつきあう暇などないらしい。

そして、この『街』では誰もがそれを疑問に思わない。

ところがその状況の中で、警察の『捜査体制』に不満を持つ者も現れた。

それは、彼女が加入していた『生命保険会社』の人間だ。

知ってのとおり、『生命保険』というものは

その『死亡原因』が『自殺』の場合、

『保険金』は支払われないことになる。

まったく連中は、どうすれば金を支払わなくてすむかってことばかり考えているものだよ。

彼らは、『サラ』の死を早く『自殺』に確定したかった。

そして警察の『捜査』が一向に進まないことを知って、
自分たちの手でその『事実を実証』しようとした。

もちろん費用はうんとお安くすませたい。

そこで、この『ジャド・グレゴリー事務所』に仕事がころがりこんだというわけだ。

どうだい、『J・B』、なんだか因縁めいた話だろう。

『リバティタウン』から遠く離れたこの『マンハッタン』で、俺と君とをつなぐ事件が起こるなんてな。

まあそういうわけで、俺はとにかく事件の調査を始めた。

しかし、この事件、調べれば調べるほど、おかしなことが出てくるんだ。

たとえば、『サラ・シールズ』の保険の『受取人』だが、それはなんと『サラ・シールズ』という人間だった。

そうなんだ。『サラ』は、『自分と同じ名前を持つ別の人間』を『受取人』にしていたんだ。

受取人の『サラ』は、『ウエストサイド』に住むの22歳のブティックの店員だ。

おかしな話だろう。

『J・B』、なあ、こいつはただの『自殺』じゃない。

間違いなく、彼女の死には何かが隠されている。

そして、それを知った以上、俺はこの事件の『真実』を突き止めなくてはならん。

ただ、正直な話、それがこの俺の手に負えることかどうか。

今ここに君がいてくれれば・・・と思ってしまうのは、やはり俺のわがままなのだろうか。

『J・B』、近いうちに一度、顔を見せてくれ。

事務所の近くに居心地のいい『アイリッシュ・バー』を見つけた。

いつでもグラス2杯分の『ギブソン』を残して待っているよ。

我が最高の相棒へ　『ジャド・グレゴリー』

今回はここまで、次回はいよいよ『J・B』が動き出す。

【第3回】名作アドベンチャーゲーム、マンハッタンレクイエム・殺意の接吻の調査報告

第3回『マンハッタンレクイエム』『殺意の接吻』本格ミステリー・アドベンチャーゲーム、刑事J.Bハロルドシリーズのご紹介ご訪問ありがとうございます。前回の続き『J・B』は突然、『サラ』から『手紙』を受...

kopenguin.com

2020.05.17