【月面都市群/グラダナ】『機動戦士ガンダム：1年戦争』なぜジオンは月面都市群/グラダナを攻撃しなかったのか？～中立を維持した月面都市の地政学～のご紹介

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今回は、『機動戦士ガンダム：1年戦争』なぜジオンは月面都市群/グラダナを攻撃しなかったのか？～中立を維持した月面都市の地政学～をご紹介します。

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『機動戦士ガンダム：1年戦争』なぜジオンは月面都市群/グラダナを攻撃しなかったのか？～中立を維持した月面都市の地政学～をご紹介します。

月面都市の歴史は古く、0027年に建設されたフォン・ブラウン基地に起源を求めることができる。

もともと月面基地は、ラグランジュ点(以降、Lと省略)にスペースコロニーを建設するにあたり、資源採掘と建設の拠点として設置された。これが後に、スペース・コロニー群(=サイド)の発展にともなって商業的に発達を遂げ、規模・人口ともに拡大し、やがて自治を認められるようになったのである。

このフォン・ブラウンに続く二番目の月面基地が、「月の裏」に建設されたグラナダである。月においては、約27日周期で地球を周回する間、月自身も自転するために地球光をまったく受けず、地球からその部分を見ることができない一帯が存在する。

この場所に基地を建設したのは、L2に建設予定のサイド3に対して、フォン・ブラウンからはるばる月の反対側のL2に物資を輸送するよりも、グラナダから鉱物資源などを供給するほうが効率的だったためである。

そしてグラナダもやがて規模を拡大し、商業的発展を遂げた末にグラナダ市となるのであるが、この発展の陰にはサイド3の存在があった。サイド3建設が進んだある時期において、サイド宙域にはマイクロウェーブ送信で電力を供給する太陽発電衛星が設置された。

グラナダが工業生産力を伸ばしていくにあたって、サイド3から大量に電力を得ることができたのは非常に好都合であった。

月は27日周期で「自転」するため、その半分の約14日間は連続して夜となる。その間はグラナダの太陽発電装置は機能しないのだ。それを補ったのがサイド3からの電力供給であった。サイド3から電力を購入することなしに、グラナダの急速な経済発展はありえなかったといっても過言ではない。

つまり、グラナダとサイド3はすでに発展の段階において密接な関係にあり、共存共栄の道を宿命付けられていたともいえる。

このような背景のもと、サイド3は「スペースノイドによる完全自治」を地球に要求する。この時グラナダをはじめとする月面都市群は表面上は静観しながらも、心情的にはその思想に共鳴するところがあった。

一般的にスペースノイドとはコロニー居住者を指し、月面都市の居住者をルナリアンとして区別するが、ともに宇宙で生活する者として地球連邦政府のさまざまな施策には反感を抱いていたのである。

たとえば、地球の環境悪化を防ぐために重化学工業の大半を月面都市へと移したことや、地球に有利な関税を設定したことなどは、宇宙生活者の目には「アースノイドの身勝手」としか映らなかったといえる。

それでも月面都市群のすべてがサイド3に同調しなかったのは、その政体の歪さにあると見ていいだろう。もともと商業的な成功によってその規模を拡大してきた月面都市群では経済界の意向を無視することはできない状況にあったが、重化学工業プラントとその支社の進出によりこの傾向にいっそう拍車がかかることとなった。

言い換えるなら、月面都市群の政治判断は経済活動と表裏一体であり、ありていに言えば「儲かる」か否かが重要な判断基準だったといえる。

この点から見ると、一年戦争前後において月面都市群が選択した政策は非常にわかりやすい。すなわち、月面都市群は地球連邦政府の一員でありながら、ジオン公国に占領されたグラナダを除いて最後まで中立を保っているのである。

これは心情的にはジオン公国(の思想と行動)を支持しつつも、中立を保つことで地球連邦政府に対しては義理を立て、一方でジオン公国軍からも攻撃を受けずに経済活動を遂行することができる。そして事実、月面都市群は一年戦争を通じて大きな戦火を免れているのである。

ここでひとつの疑問が生じる。あれほどまで徹底して各サイドを壊滅状態にまで追いやったジオン公国軍が、なぜグラナダ以外の諸都市には一切手出しをしなかったのか、ということである。

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無論、月面都市群がいち早く中立宣言を行なったこと、また心情的にジオン公国の「独立・自治」という思想に共鳴していたことは大きな理由といえる。だがそれ以上に重要だったのは、月面都市群がジオン公国にとっては必要不可欠な存在だったためだろう。グラナダとサイド3の共存関係は先に述べたが、それ以外の諸都市もジオン公国という「国」を運営していくために、鉱物資源をはじめとする天然資源や、各種工業製品の供給元としてなくてはならない存在であった。

それゆえに中立という「名」を与えて、交易という「実」をとったと見ることができる。つまり、ジオン公国軍はあえてグラナダ市以外の月面都市群には手を出さなかったと見るのが妥当だろう。

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ところでグラナダ市が公国軍に制圧されたのには、いくつかの理由がある。まず開戦当初においては、「ブリティッシュ作戦」遂行のために必要不可欠な存在であったからである。すなわち落下させるコロニーを地球への自由落下軌道に乗せるまでは、コロニー本体を地球連邦軍の攻撃から防衛しなくてはならないが、予定軌道にあるグラナダ上空を通過している間は、グラナダの防衛力をアテにすることができるのである。

だが、「ブリティッシュ作戦」が失敗に終わり戦争の長期化が明白になってくると、グラナダ市は別の意味において重要になってくる。ひとつにはジオン本国に対する最終防衛ラインの一角として、また他方では地球連邦政府にはるかに劣るジオン公国の国力を補う存在としてである。

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ことに、兵器生産においてグラナダ市は戦略的に最重要拠点であり、戦争開始以降の宇宙戦用モビルスーツの大半はジオン本国ではなく、このグラナダで生産されているのである。

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そしてここでまたひとつの疑問が生じる。それは、なぜこれほどまで戦略的に重要なグラナダ市に対して地球連邦軍は進攻を試みなかったのか、ということである。

常識的に考えるならば、ソロモンを攻略するよりもグラナダを攻略したほうがジオンにとっては大きなダメージであっただろう。グラナダ市を陥落させればジオン本国は指呼の間にあり、しかもMSという戦略的に最重要な兵器の生産拠点をほぼ失うことを意味する。

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言い換えるなら、ソロモンおよびア・バオア・クーの2か所を陥落させるより、グラナダ市を占領したほうが戦争終結は早まったはずである。

その証拠に、キシリア・ザビ指揮下の突撃機動軍は地球連邦軍のグラナダ進攻を警戒してソロモン攻略戦に増援を送っていない。

にもかかわらず、地球連邦軍がグラナダ市を攻撃対象としなかったのは、グラナダ市の持つ商工業の基盤を失いたくなかったからと見るべきだろう。

宇宙への反攻を開始したこの時期、地球連邦政府は戦後の復興をその視野に入れており、戦争終結後のサイド3の監視のためにも、また復興のためにもグラナダ市は重要な役割を果たすはずであった。

そしてそれはグラナダ市だけでなく、月面都市群もまた同様である。そのために地球連邦軍は最後までグラナダ市のみならず、月面そのものを戦場にすることを避けたのであろう。

そして、このことは月面都市群の行政府および経済界)の思惑とも一致し、戦争終結後の経済復興および発展に大いなる貢献をすることとなった。

そしてグラナダ市もまた、ジオン公国軍のMS生産を担っていたジオニック社がアナハイム・エレクトロニクス社に吸収されたことを除いては、事実上もとの鞘に収まったのである。

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