現在のナイフ界の技術、精神、そして素材や市場を開拓した近代ナイフの父「R.W.ラブレスの歩み」についてご紹介
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今回は、現在のナイフ界の技術、精神、そして素材や市場を開拓した近代ナイフの父「R.W.ラブレスの歩み」についてご紹介します。
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ランドール・ナイフを買いそびれたことがすべての始まりだった
1953年12月、オイルタンカーの船員だったラブレスは、船乗りにとって欠くことできない道具だったナイフを購入するため、ニューヨーク、マジソン街のアウトドアショップ“アバクロンビー&フィッチ(以下:アバクロ)”に足を運んだ。そのとき欲しいと思っていたのは、現在でも著名なランドールのナイフだったといいます。
1956年、メリーランド州デラウェア時代の1枚
全米屈指の高級アウトドア・スポーツ・ショップ「アバクロ」
アバクロは、スポーツ系アメリカン・カジュアルの有名ショップですが、1970年代後半に再建されるまでは、全米屈指の高級アウトドア・スポーツ・ショップでした。プロのハンター、登山家、冒険家、各界の有名人などがこぞってこのショップを利用したといいます。
都市型スポーツの発展に大きな影響を及ぼした第26代大統領、セオドア・ルーズベルトも顧客のひとりだったそうで、小説家のアーネスト・ヘミングウェイが、最後のアフリカ・ハンティングに出かけるとき、アバクロでラブレスのナイフを何本か購入したという話も有名です。
1930年代、アメリカでに“ハンドメイド・ナイフ”というジャンルが登場
アメリカでは、1930年代に“ハンドメイド・ナイフ”というジャンルが登場し、第二次大戦前後には、ビル・スカーゲル、ネルソン・クーパー、W.D.ランドールなどの名前が知られていました。
しかし、鍛造されていたこれらのメーカーのナイフは、製作される数が少なく、どこでも買えるというものではありませんでした。ラブレスは、有名なアバクロなら在庫があるだろうと思って出かけたそうですが、残念ながら在庫はなかったのです。
「簡単に手に入らないのなら、自分で作ろう」
ランドールのナイフを買いそびれたラブレスは、自宅に戻る途中で「簡単に手に入らないのなら、自分で作ろう」と思い立ち、スクラップ屋に立ち寄ります。そこで、1937年式パッカードの後輪に使われていた板バネを購入。鍛造とディスクグラインダーによる研削、サンドペーパーによる研磨などの方法を駆使し、1週間ほどでナイフを完成させます。
1956年当時の工房での写真。拳銃やライフルに対する造詣も深かった。
鍛冶の知識を必要としない「ストック&リムーバル法」の確立
出来上がったナイフをアバクロに持ち込むと、その場で3本の注文を受けることになります。最初の1本と同じ方法で、1か月ほどかけて3本を納品。数か月後にアバクロに行くと、納品した3本は即座に売れてしまったといいます。
次の注文は12ダース(72本)
次の注文は12ダース。ナイフを作り始めたばかりのラブレスにとって、あまりに多すぎる数でした。半分の6ダースで話をまとめ、帰りに小型のベルトグラインダーやボール盤など、新しい工作機械を買い込みます。
ナイフメーカー初期の頃
昼間は船員、夜はナイフメーカーという二重生活で、6ダースすべてを納品
昼間は船員、夜はナイフメーカーという二重生活が始まることになります。2、3本なら鍛造でも作れますが、72本となると鍛造中心ではとても作れない。より合理的で均一な仕上がりのナイフを作る方法を模索しながら、2か月半ほどで6ダースすべてを納品します。
鍛造ではなく板材を削り出す「ストック&リムーバル」の基本構想が生まれる
この時の経験から、鍛造ではなく板材を削り出す“ストック&リムーバル”の基本構想が構築されることになります。後にカリフォルニアに転居し、フルタイムのナイフメーカーになる頃には、ベルトグラインダーを利用したストック&リムーバル法が確立され、ラブレスはその方法を多くのメーカーにレクチャーしてゆくことになります。
電話をかけるラブレス
ローンデール時代に製作した20本セット1から20までの刻印が打たれている)を前にしたラブレス
知りたがっている人にはなんでも教える「隠すべきものはなにもない」
知りたがっている人にはなんでも教える。「隠すべきものはなにもない」というのがラブレスの基本姿勢でした。ラブレスがナイフを作り始めた頃、刃物は鍛冶屋が作るのが常識で、一般の人が手を出せる分野ではなかったのですが「ストック&リムーバル法」が広く公開されたことでナイフ作りは誰でも楽しめるものになり、多くの優れたナイフメーカーが生まれ、現在に至っています。
「手仕事」の工程も多かったラブレスのナイフ作り
インプルーブドハンドルをヤスリで成形するラブレス。近代ナイフの父という異名もあって機械加工のイメージがあるラブレスですが、微妙な膨らみやラインを形作るため、いわゆる「手仕事」の工程も多かったといいます。
パートナー、スティーブ・ジョンソンとラブレス
1971年の6月から新しいパートナー、スティーブ・ジョンソンとともに製作をしている。彼がフル・パートナーシップを取るようになってから「ラブレス・ナイフ史上最高の出来になった」と私の友人たちは口を揃える」
ナイフはあくまでも実用品
ラブレスは冶金学に対する造詣も深く、刃物を鍛造で作る理由をよく理解していました。またナイフはあくまでも実用品というスタンスだったので、まず良く切れるブレードが不可欠だと考えていたといいます。
削り出しで作るためには、鍛造しなくても良いナイフになるだけの資質を備えた鋼材が必要
つまり、削り出しで作るためには、鍛造しなくても良いナイフになるだけの資質を備えた鋼材が必要だということに、最初から気が付いていたのです。ラブレスは、鋼材に対しても積極的な姿勢を持っていたことが知られています。それはすべて、少しでも良いナイフを作りたいという、自らの欲求によるものでした。
伝統的な鋼材にこだわらず、自分の基準で鋼材を探し始める
ラブレスが最初に利用したパッカードのスプリングは、たまたまニッケルの含有量が多かったため、折れたり割れたりしにくい、性能の良いナイフに仕上がりました。その経験から、鍛造刃物に利用されてきた伝統的な鋼材にこだわらず、自分の基準で鋼材を探し始めます。
最初に行き着いた鋼材“ジェソップ139-B”
最初に行き着いたのは、ジェソップ(JESSOP)・スチール・カンパニーが生産する“ジェソップ139-B”という鋼材だった。これは、2.3%のニッケルを含有した工具鋼で、ラブレスはその資質に満足し長く愛用したといいます。
1971年に「154CM」を採用
ジェソップがこの鋼材を作らなくなると、それに代わる様々な鋼材をテストし始めます。ステンレス鋼の導入にも積極的で「440C」「154CM」などをテストし、1971年に「154CM」を採用。
だめだと判断したらすぐやめる、納得したら簡単には変えない
ラブレスは、なんでもやってみて、だめだと判断したらすぐにやめてしまう合理的な性格。その代わり、これがいいと納得したら簡単には変えない。その後約10年間、ラブレス・ナイフは「154CM」を素材に作られることになります。
1970年代、アメリカで大きく普及する「154CM」
ラブレスが「154CM」を使い始めると、他のメーカーもそれを使うようになる。1970年代のアメリカで「154CM」はカスタムナイフ用の高級鋼材と言われるまでに発展することになります。
日立金属の「ATS34」に興味を示すラブレス
日本との交流が深くなった1980年代に入って、ラブレスはさらに優れた鋼材を求めるようになり、日立金属の「ATS34」に興味を示します。この鋼材にも各種のテストを実施し、その資質に納得した上で「154CM」から「ATS34」に素材を変更。
以後およそ30年、このステンレス鋼を自らのスタンダードな素材として使い続けています。
アメリカのカスタムナイフ界が、ラブレスの動向に従ったことは言うまでもありません。
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自分なりのナイフを作る
ストック&リムーバル法を確立したことで加工の自由度も飛躍的に広がることになったカスタムナイフ。細かな部分の加工も楽にできるし、ハンドルの形状もそれまで以上に複雑にすることができる。ラブレスは、それまでのランドール・スタイルを止め、自分なりのナイフを作るようになっていきます。
ローンデール時代のラブレス
保守的な「東海岸」、良ければ抵抗なく受け入れる「西海岸」
東海岸は比較的保守的で、新しいアイデアをなかなか受け入れない傾向があります。それに比べて、西海岸はどちらかというと革新的。それまで無かったものでも、より良ければ抵抗なく受け入れる文化がありました。
近代的なデザインであり、より作りやすいナイフを
ラブレスもそんな環境の中で、新しいナイフを考え始め、それは近代的なデザインであると同時に、より作りやすいナイフということでもありました。ラブレス・ナイフを代表する「ドロップポイント」「セミスキナー」「ガットフック」「ユーティリティ」「シティナイフ」「ウィルダンネス」「ビッグベア」など、近代的なスポーツナイフを次々にデザインしてゆくことになります。
現在ではそれらの多くが、世界中のカスタム・ナイフメーカーは言うまでもなく、マスプロもコピーする近代ナイフのスタンダードになっています。
1971年後半にリリースされたカタログ
ナイフの写真はラブレス自ら撮影したそうです。 ラブレスは、自らの作品を掲載したカタログを1ドルで販売していました。
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タングに関する、基本パターンも確立
また、タングに関しても、いくつかの基本パターンが確立されることになります。ハンドルのアウトラインそのままの「フルタング」や、それを改良した「フル・テーパードタング」タングの周囲をシンチュウで覆う「ラップドタング」、ハンドル下側をハンドル材で覆う「ハーフタング」、そしてハンドル材で完全に隠す「コンシールド(ヒドゥン)タング」。
これらの考案に伴って、ハンドルのデザインも、シンプルなものからフィンガーグルーブを備えたものまで多彩にアレンジしています。ブレイドのデザインと同様に、これらハンドル部分に関するラブレスのアイデアも、多くのナイフに取り入れられています。
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ラブレスが作り上げた「ポーチシース」
現在、カスタム製作されたシースナイフの多くに、品質の良いポーチシースが付属します。このポーチシースも、近代的なデザインのナイフに合わせて、ラブレスが作り上げたものです。
ラブレス・ポーチシース
そのため、“ラブレス・ポーチシース”とも呼ばれており、ナイフとシースをフィットさせるために、厚手の革を折り曲げて成型するウエットフォームという製作方法を導入。ストラップレスですが、ヒルトやハンドルの起伏でナイフをロックするため、シースの中でナイフが動くことがなく、スピーディに出し入れでき、しかも非常に安全な構造のシースです。
ナイフに関わる人と人との繋がりを創造することに、惜しみなく努力すること
以上のように、ラブレスはナイフに関して讃えられるべき数々の功績を残してきました。それらの中で最も偉大な貢献は、ナイフに関わる人と人との繋がりを創造することに、惜しみなく努力したということでしょう。
1970年に結成した技術の向上と市場の開拓するための“ナイフメーカーズ・ギルド”
1970年にカスタムナイフメーカーを集め、技術の向上と市場の開拓、ディーラーやファンとの交流を目指して結成したアメリカの“ナイフメーカーズ・ギルド”は、ナイフ界を大きく発展させる原動力になります。
ベルトグラインダーを駆使したナイフメイキングを豊富な写真と文章で解説した本で、日本の多くのカスタムナイフメーカーたちのバイブルとなった。
1980年、日本でもJKG(ジャパン・ナイフ・ギルド)が発足される
1979年には、日本のナイフ界にギルドの必要性を説き、そのアドバイスによって1980年にJKG(ジャパン・ナイフ・ギルド)が発足。初代会長を務めた後、名誉会長として日本のカスタムナイフ界の発展に寄与し続けます。
現在のナイフ界は、技術、精神、そして素材や市場のなど、すべてラブレスによって開拓されたと言っても過言ではありません。
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