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大工手道具の中で最も多くの種類が存在する「鑿(のみ)バリエーション」についてご紹介

大工手道具の中で最も多くの種類が存在する「鑿(のみ)バリエーション」についてご紹介 道具/工具
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大工手道具の中で最も多くの種類が存在する「鑿(のみ)バリエーション」についてご紹介

ご訪問ありがとうございます。
今回は、鑿の仕立てのひとつ「冠下げ」についてご紹介します。

かつて鑿の世界で主役だった「本叩き鑿」

かつて鑿の世界で、横綱的な扱いをされていたのが「本叩き鑿」でした。刃が厚く首や柄も長い、見るからに頑丈なつくりで、柱や梁などの構造材に深くて広いホゾ穴を掘る荒仕事を担っていました。
「本叩き鑿」の最盛と衰退
本叩き鑿を主に使ったのは、江戸時代か続く、穴大工(穴職人)と呼ばれたホゾ穴掘りの専門家たちでした。昭和40年代、機械化の進展で穴大工は建築現場から退場していくことになります。それにともなって本叩き鑿の存在感も薄くなっていったのです。
より鋭利な切削を求めて二千年の歳月から鍛え上げられた「鑿(のみ)の歴史」のご紹介
より鋭利な切削を求めて二千年の歳月から鍛え上げられた「鑿(のみ)の歴史」のご紹介ご訪問ありがとうございます。今回は、より鋭利な切削を求めて二千年の歳月から鍛え上げられた「鑿(のみ)の歴史」をご紹介します。 弥生時代に中国から鉄製の鑿が伝わり...

「本叩き鑿」代わり台頭した細かい造作がメインの「追入れ鑿」

代わって台頭したのが「追入れ鑿」でした。「大入れ鑿」とも呼ばれるこの鑿は、家具などの細かい造作がメインで、本叩き鑿に比べれば、刃は薄くて首も柄も短い。加工対象が小物中心に移ることで、この主役交代が起こることになります。

明治初めの八丁堀で誕生した「追入れ鑿」
「追入れ鑿」は、明治の初めに東京の八丁堀の鍛冶職、国弘が叩き鑿のミニ版として考案したものです。その後、規格として定着し、現在では鑿といえば「追入れ鑿」を思い浮かべる人がほとんどでしょう。

追入れ鑿/いいれのみ

ホゾ穴掘りから仕上げ削りまでこなせる鑿のスタンダード的な位置づけがなされ、DIYでも定番の叩き鑿。一分(約3ミリ)から一寸四分(約42ミリ)まで、刃幅の違う10本で構成されています。

三分、五分、八分あたりがよく利用されるサイズです。一分鑿があれば、鉋の押さえ溝の調整に便利です。

中叩き鑿/ちゅうたたきのみ

地域によっては「半叩き」と呼び、荒仕事向けの「本叩き鑿」と造作中心の「追入れ鑿」の間を埋める存在。プロ向けの色彩が強く、DIYでも大きめな創作に取り組みたいという人には、「追入れ鑿」よりこちらがオススメです。
中叩き鑿は追入れ鑿よりも、穂先や首がやや長く頑丈につくられています

刃幅は一分から一寸六分までとバラエティに富み、下記の写真は10本セットですが、追入れ鑿と同様に一本単位でも購入できます。

中叩き鑿は追入れ鑿よりも、穂先や首がやや長く頑丈につくられています

中叩き鑿は追入れ鑿よりも、穂先や首がやや長く頑丈につくられています

鎬鑿/しのぎのみ

鎬鑿/しのぎのみ

鋭角の隅まできちんと仕上げられる。細かい加工用に何かと便利な一丁。
鎬鑿は、穂先の断面が三角形をしており、甲が高くて厚みのある道具。追入れ鑿では刃が入らない鋭角部分の隅にまで届いて削ってくれます。まさに蟻継ぎ加工には打ってつけの鑿。
さらに細かくてデリケートな細工にも適しているため、鎬鑿を一丁加えることで造作の可能性が広がります。刃幅は一分から一寸あたりまで。叩き鑿タイプと突き鑿タイプが市販されています。

鏝鑿/こてのみ

鏝鑿/こてのみ

首が曲がった独特のプロポーション溝底の仕上げ削りに威力を発揮する
左官用の鏝に似ていることから、この名称がつけられました。蟻溝の底など、底仕上げに活躍する突き鑿です。首を曲げているのは、柄を握った手がじゃまにならないようにするため。

溝のドン詰まり部分を突いて削ることもでき、ホゾ穴掘りの幅を広げてくれます。断面は三角形のものが多く、刃幅を変えたラインアップがそろっています。

突き鑿/つきのみ

突き鑿/つきのみ

鉋(かんな)が使えない狭い場所を削って仕上げるのが突き鑿の役割です。ホゾ穴やホゾの仕上げ削りもお手の物。手に入れればプロ並みの加工も可能になるかも。
DIYには、柄や首が短い薄鑿がオススメ。扁平な穂先は薄く、かなり狭い場所の仕上げにも対応してくれます。

薄鑿は一般的な突き鑿よりも柄や首が短く、サイズ的に使いやすい

外丸鑿/そとまるのみ

外丸鑿/そとまるのみ

用途を限定したプロユースの叩き、鑿裏刃全面が曲面状につくられている
円弧状の突き出した切刃を持ち、丸柱や丸太の取りつけ部の加工に用います。使う目的に合わせ、刃幅や曲率が異なる多くのサイズが用意されています。プロが用いる道具ですが、アイディアしだいでDIYでも様々な用途に活用できます。

刃が内側に引っ込んだ、内丸鑿というタイプもあります。

逆鏝鑿/ぎゃくごてのみ

逆鏝鑿/ぎゃくごてのみ

鏝鑿(こてのみ)とは逆方向の首の曲がりをした柱の首切りに用いる特殊な叩き鑿。
下記の「首切り鑿」と同じく、柱の側面をカットし、床板をはめ込む作業に使います。首は裏スキ側に曲がり、鏝鑿とは逆の形状。また鏝鑿が突き鑿なのに対して、こちらは叩き鑿となっています。

首切り鑿

首切り鑿

首切り鑿は、立てた柱に床板を差し込む加工の際に用います。鋸で柱に二本の切り込みを入れ、この鑿を玄能で叩き、材をかき取って床板を入れる隙間をつくります。
柱を切断するように切り込むことからこの名前がついたそうで「床張り鑿」という別名称もあります。柄のないシンプルな構造ながら、様々な刃幅が用意され、大工さんたちに重用されていました。

水平に叩き込むため、じゃまになる柄はついていません

剣先/けんさき

剣先/けんさき

小刀に似ていますがこれでも立派な鑿裏。スキもあって剣先刃は極めて鋭い
鉋がかけられない場所の平面をきれいに仕上げる道具。裏スキもあり、小刀とは別ジャンルの製品。削りやすいように握り柄の部分を少しだけ浮かせています。
鑿を入れるために部材に切り筋を入れ、白引とも形状が似ています。しかし用途はまったく別。刃幅や長さが違うタイプが市販されていますが、通常の鑿の刃先を逆V字状に研いで代用することもあります。

部材の表面を削って仕上げる剣先鑿。裏刃には裏スキがあります

「特殊鑿」のご紹介

数ある鑿のなかでも、DIYではお目にかかれない希少な特殊鑿をご紹介します。

向待鑿/むこうまちのみ

向待鑿/むこうまちのみ

建具にホゾ穴を掘るための小型の叩き鑿。「向う区鑿」とも表記され、穂と首の部分の断面は方形で、穂先と首の幅の差がないのが特徴です。刃幅は五厘から六分まで。建具製作では主役の働きをすることから「建具屋鑿」とも呼ばれています。

二本向待鑿/にほんむこうまちのみ

二本向待鑿/にほんむこうまちのみ

向待鑿の一種で、建具の並列するホゾ穴を同時に掘ることができます。そのために穂先が二股にわかれています。刃幅は二分が一般的で、刃と刃の間隔が一分五厘、二分、二分五厘のものがあり、製作が難しく、鑿鍛冶泣かせの製品。

壺丸鑿/つぼまるのみ

壺丸鑿/つぼまるのみ

丸鑿の一種で、穂先の断面が半円状に窪んでいて、曲面仕上げに使用します。似た形状の鑿に裏丸鑿がありますが、裏丸鑿の刃先が丸い曲線状なのに対し、壺丸鑿の刃先は一直線状につけられています。刃幅は三分から一寸サイズが標準的。

鐔鑿/つばのみ

鐔鑿/つばのみ

部材に大きな釘類を打ち込む際、この鑿を使って事前に穴を開けます。名称の由来となった柄の下にある鐔状の突起は、叩き入れた鑿を玄翁(玄能)で叩いて抜くためのものだそうです。両鐔と片鐔の2タイプがあり、さらに刃先も両刃型と片刃型があります。

打抜鑿/うちぬきのみ

打抜鑿/うちぬきのみ

ホゾ穴掘りのスピードアップに貢献する鑿。両側からホゾ穴を半分近くまで掘り、この打抜鑿で片方から打ち抜き貫通させます。先端部には刃がなく、長方形の角型につくられています。

先端にV字型の切れ込みを入れたタイプもあります。

底さらい鑿/そこさらいのみ

底さらい鑿/そこさらいのみ

貫通させないホゾ穴の底は、なかなかきれいに削れないもの。そこでこの鑿をホゾ穴に差し込んで、手前に引きながら刃先で切り屑をかき取っていきます。首が途中で曲がっているのが特徴。「かき出し」「屑出し」の別名もあります。

鑿/もりのみ

鑿/もりのみ

この鑿も、貫通させない掘り止めのホゾ穴の修正に用います。掘り止めのホゾ穴の底には、どうしても山形の掘り残しができてしまいます。その部分に銛状の刃先を打ち込み、引っ張り上げながら崩していく道具です。刃先の形から命名された叩き鑿。

鎌鑿/かまのみ

鎌鑿/かまのみ

この鑿も掘り止めのホゾ穴の調整用です。ホゾ穴底面とホゾ穴側面が接する角を正確に整えます。タイプは突き鑿型で押し切りして使い、刃先は両刃の小刀状のものと、銛(もり)状にしたものがあります。建具など小さな造作の現場で活躍します。

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