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農家の収穫作業のために重要な「雑木林の管理」と「閑散期の仕事」についてのご紹介|古民家を訪ねる旅

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農家の収穫作業のために重要な「雑木林の管理」と「閑散期の仕事」についてのご紹介|古民家を訪ねる旅

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今回は、農家の収穫作業のために重要な「雑木林の管理」と「閑散期の仕事」についてご紹介します。

骨董・民具・古民家関連サイトマップのご紹介

骨董・民具・古民家関連サイトマップをご紹介します。

急速に失われる「武蔵野の農村風景」

一目見てそれと分かる農家の屋敷構えをもった家は、今ではすっかり少なくなってしまいました。世田谷区の場合、昭和45(1970)年1,135戸存在した農家は、平成7(1995)年には529戸と大きく減少しています。そして、区内に広く見られた「草葺(くさぶき)の民家」「水田」「畑」「雑木林」といった武蔵野の農村風景も、急速に失われていきました。
急速に失われる「武蔵野の農村風景」

農家の生活の基盤として欠かせない存在だった「雑木林(平地株)」

これら失われつつあるものの中で、特に「雑木林(平地株)」は武蔵野を代表する美しい自然の景観として、たびたび文学作品などで取り上げられ紹介されてきました。しかしながら、農家にとっての雑木林は単なる自然景観ではなく、むしろ水田や畑と同様に生活の基盤として欠かせない存在であったといえるのです。

武蔵野の「雑木林の成り立ち」

武蔵野は荒川と多摩川にはさまれた台地で、世田谷区域の大部分がその範囲に含まれています。この武蔵野台地において、はやくから集落が成立したのは、台地の周縁部や小河川(しょうかせん)沿いなど、水の便のよいところです。
武蔵野の「雑木林の成り立ち」
しかし、水に恵まれないうえに作物の栽培には不向きな土壌に覆われた台地内部は、近隣の村々から牛馬の飼料にする秣(まぐさ)、屋根葺き(やねふき)の材料の萱(かや)そして食糧となる野草などの採草地として利用されるにすぎませんでした。

当然、畑や集落もほとんどなく、そこにはススキやオギの生い茂った草野に小木を交えた原野が存在するのみでした。

一面の野原が広がっていた武蔵野

行く末は空もひとつの武蔵野に草の原よりいづる月影

(自分の進んでゆく野の果ては空も一体になって見える武蔵野だがその草原の果てから月が昇り始めているよ) 

―摂政太政大臣―

鎌倉時代の「新古今和歌集(1205年成立)」に収められたこの歌には、果てしなくつづく草原の情景が詠み込まれ、いまから800年ほど前の武蔵野には一面の野原が広がっていたことを伺わせます。

農村地帯へと変貌遂げる「江戸時代」

しかし、江戸時代になると武蔵野でも新田の開発が進められ、広大な原野は一変して農村地帯へと変貌を遂げます。「果てしなくつづく草原」は人の手によって計画的に開発され、広い道路や畑・宅地へと姿を変えていったのです
また、開墾された農地には、新たに「クヌギ」「コナラ」「アカマツ」などの木々もたくさん植えられていました。こうして、武蔵野に雑木林が次々と人工的につくり上げられていったのです。

わざわざ木を植えて雑木林をつくる理由

では、なぜ農地を開拓するのに、わざわざ木を植えて雑木林をつくる必要があったのでしょうか。

雑木林は、冬の強い季節風による耕地の「風害」を防ぎ、落葉からは「肥料」が作られて痩せた畑の土を肥やすのに使われます。さらに、成長して15年も経た樹木は伐採され「薪」や「炭」となってエネルギーを供給する機能ももっています。

雑木林の役割

つまり、雑木林は「防風林」として農地や集落を保護する機能から、農作業や日常生活において様々な資材を供給する「農用林」の役割までも果たしているのです。

言い換えれば、雑木林は農家生活や農業生産と密接した存在として、必要不可欠であったと言えるでしょう。それ故に、人々は「クヌギ」や「コナラ」の管理・育成に努めてきたのです。

【農用林】農家の生活や農業生産と結びついた林野のことを「農用林」と言います。

武蔵野の雑木林の多くは、江戸時代に育成されたもの

武蔵野の雑木林の多くは、江戸時代に入って原野を開拓する過程で育成され、現在に至ったものなのです。まさしく雑木林は、生活の必要上から農家の人たちによってつくり上げられた人工林であると言えるでしょう。

雑木林と農家のくらし

かつて農家が冬に行っていた労働で、雑木林と関わり合いの深い作業をご紹介します。

【1】12月:雑木林の冬

田に比べて畑の多い世田谷区域では「サツマイモ」「ニンジン」「キュウリ」「大根」といった様々な野菜が1年を通して耕地に植えられていました。大根の収穫が終わり畑仕事が一段落する12月になると、いよいよ雑木林での仕事がスタートします。

「刈り取り作業」と「枯れ枝を拾い」
まず最初に、林床(りんしょう/雑木林の地表面)に生えている低木や下草(しもくさ)を刈り取ったり、間伐したり、あるいは枯れ枝を拾い集める作業が行われます。
鎌(かま)や鋸(のこぎり)を使って中腰で行わなければならなかったうえに、たいへん力のいる作業だったので重労働を強いられましたが、集めた草木は自宅に持ち帰れば自家用の燃料になります。
【間伐】主だった木々の生育を良くしたり、採光を良くするために、適当な間隔で木を伐採する作業を開伐と言います。雑木林では、クヌギとかコナラのような木を残して、そのほかの雑然と生えているエゴノキやハンノキを伐採しました。間伐は雑木林を管理し守るためにも欠かせない作業でした。

萱(かや)は屋根葺きの材料へ
さらに、下草の中でも萱(かや)は保存しておけば屋根葺きの材料となるので、これらの仕事をこなすことは、暮らしの上で非常に意味のあることでした。また、これを行わないとその後に行われる落葉の採取ができなくなってしまうので、まずはこうした作業をこなしておく必要があったのです。

【2】12月~1月:落葉から畑の土をつくる

これらの作業が終わると、いよいよ「クズハキ(掃き)」とか「シバハキ(柴掃き)」などと呼ばれる落葉採取がはじまります。厚く一面に積み重なった落葉を「熊手(くまで)」でかき集め、大きな竹篭(たけかご)につめて家まで運んでいきます。

落葉はとたんに湿って重くなるため、雪が降り積もる前に終わらせる
雪が降り積もると落葉はとたんに湿って重たくなり、掃き集めて運ぶことが難しくなるので、クズハキの作業は雪の日が増える2月の中旬までには終わらせておく必要がありました。

肥料づくり

こうして12月から1月にかけて毎日のように集められた落葉の多くは、屋敷の庭か畑の隅に高く積み上げられて肥料の材料にされました。世田谷の農家には肥料をためておくための小屋(堆肥小屋)を持つ家もありましたが、多くの場合は野積みにしておいて、一緒にドブの水や糞尿をかけて、落葉をその場で腐らせるようにしました。
途中、細かく刻んだ藁(わら)や残飯を混ぜながら何度も切り返し(天地返し)をしていくと、やがて落葉は完全に発酵して堆肥と呼ばれる肥料になります。
牛馬を使った良い肥料(厩肥)の作り方
このほか、家畜を飼っている農家では、落葉を畜舎に運び入れ牛馬に踏ませておきます。すると牛馬の糞尿と混じり合って、厩肥(きゅうひ)と呼ばれる良い肥料が作られました。

様々な作物を育てるために重要な仕事だった「堆肥づくり」

世田谷の農家は昔から色々な作物を畑につくってきました。当然、限られた農地から年に何度も作物を収穫するには、大量の肥料を必要とします。そのため、農家ではさまざまな種類の肥料を用いてきましたが、中でもよく使用されたのは、人(牛馬)の糞尿と堆肥であったといいます。

したがって、農作業の合間に大量の落葉をかき集めて堆肥をつくっておくことは、農家の経営を支える重要な仕事だったのです。

【3】2月~3月:落葉で苗を育てる

苗床(温床)づくり
落葉は肥料の材料となるだけでなく竈(かまど)や風呂の燃料にもなりますが、農作業におけるもうひとつの利用方法に「苗床(なえどこ/温床)づくり」があります。

苗床は、野菜類の苗を育てるための温床(おんしょう)で、昔ながらの踏み込み温床では大量の落葉が必要とされます。

【温床】苗を安定して早く育てるために土を暖かくした苗床。苗を作る温床には「踏み込み温床」と「電熱温床」があります。前者(踏み込み温床)は伝統的につくられてきた苗床で、踏み込まれた落葉の発酵熱が熱源となります。後者(電熱温床)は現代になって用いられるようになったもので、電熱線が熱源となります。
苗床の作り方
苗床を囲う枠には色々な物が使用されます。昔ながらの方法でつくられた苗床では「藁(わら)」を用いたものがあります。まず、長方形になるように四隅に杭を打ってから、その間に一定の間隔で杭を打ち付けていきます。
次に横に「真竹」を2段ほど渡して、半折りにした稲葉を縦に差し込み回りを囲みます。これが古くから行われてきた温床枠のつくり方でしたが、やがて「藁(わら)」の代わりに「畳」を半分に切ったものなども使われるようになります。
木の板を使用した苗床の作り方
世田谷区内のある農家では、枠に藁や畳ではなく木の板を用いた苗床が作られていました。他の苗床とは異なり、枠の上には、保温用にガラス障字がはめ込まれています。大きさは東西2間〜6間(約3.6〜10.8m)、南北6尺(約1.8m)の長方形で、南面の高さを低くして日当たりを良くする工夫がなされています。
【1】「クズッパ(落葉)」集め均一に踏み込む
苗床の枠ができると、まずその中に「ヤマ(雑木林)」で集めた「クズッパ(落葉)」を大量に積み込んで、次にすべてを均一に踏み込んでいきます。こうして踏み込まれると、高さ30〜60cmの枠から溢れんばかりの状態にあった落葉は、5cm足らずの厚さになります。
【2】「稲葉を敷き」「米糠撒く」
その上に細かく刻んだ「稲葉」を20cmくらいの厚さに敷き、さらにその上に「米糠(こめぬか)」をむらのないように撒いて、苗床がビショビショになるくらい水を充分に撒きます。
そして、何度も切り返しながらこれらのものをよくかき混ぜたら、全体を踏み込んで平らにしていきます。
【3】踏み込み後、土を敷いて糞尿をかける
最後にしっかりと踏み込まれた葉と落葉の表面に、土を15cmくらいの厚さに敷いて、人か牛馬の糞尿をかけておきます。
【4】落葉と葉が発酵されて25〜30°Cの温度になれば完成
最終的に落葉と葉が発酵して25〜30°Cの温度になる苗床ができれば、しっかりとした良い苗を育てることができるといいます。
多くの経験と知識が要求される「苗床作り」
しかし、これより低い温度では苗が丈夫に育たず、高い温度では苗がフケッて(腐って)育たないので、入れる落葉などの材料の配分や踏み込み方、水分の加減に、多くの経験と知識が要求される仕事でした。

苗床の準備をはじめる時期

苗床の準備をはじめる時期は地域や農家によって異なりますが、世田谷では1月の終わりの頃から3月はじめの時期にかけて行われていたようです。
世田谷での苗床の準備
世田谷区域では、「トマト」「ナス」「キュウリ」「カボチャ」「サツマイモ」などの作物について苗床を用いた栽培が行われていました。3月に入ってから、順次苗床にこれらの種を播いていき、彼岸入り前の時期になってサツマイモの種芋を伏せ込み(植え付け)ます。
気を抜けない苗床の管理
苗床に種を播いてからも、その管理には気を抜けませんでした。農家によっては寒中であっても薄手のシャツ一枚の姿で作業を行ったといいます。こうすることで、どの程度冷たいか、あるいは熱いかを苗床から肌で感じ取ることができ、微妙な温度調整が行えるのだというのです。

苗づくりで夏の収穫が決まる

例えば、サツマイモは「苗半作」とも「苗七分作」とも言われるように、野菜作りでは苗づくりがうまくいくか否かで、その年の夏の収穫が決まると言えます。
確かに、苗床づくりは大変な労力を必要としますが、霜の降りる寒い時期でも苗床の土は温かいので、早い時節から安定して苗を栽培することが可能になるのです。
【苗半作/苗七分作】育苗が甘藷栽培の半分、あるいは7割を占めるほど重要な作業であるという意味。サツマイモは苗の出来、不出来によって、その年の収穫量が左右されると言われています。

現在では「電熱温床」が普及して伝統的な踏み込み温床は世田谷でもほとんど見られなくなってしまいました。しかしながら、かつては雑木林の落葉を使った苗床が、夏の野菜をつくるために大切な役割を果たしていたことは間違いありません。

【4】3月~4月:木を伐って雑木林を守る

苗床での野菜の苗づくりがはじまり彼岸も近くなると、冬の間に行われる雑木林での作業は終わりに近づきます。落葉採取を終えてから3月上旬にかけてのこの期間には「クヌギ」や「コナラ」の伐採が行われます。

「薪」や「炭」の材料となるの木々の伐採

武蔵野の農家では、15年から20年くらいに成長した木々を次々に伐採して薪や炭の材料を採取します。中でもクヌギやコナラは火持ちが良く、この時期にしか取れない貴重な燃料でした。

農家によっては、伐採した木から自家用の燃料をつくるだけでなく、薪や炭を都市に売りに行ったり、山師に立木のまま売却することで現金収入も得ることができました。

雑木林を守る上で重要な「伐採作業」

このように薪炭を作るために木を伐ったからといって、農家が雑木林を破壊しているわけではありません。むしろ、伐採作業は雑木林を守る上で重要なことでした。

古木から若木に生まれ変わらせる「萌芽更新」

雑木林の木々は、30年も経つと衰えて、やがて立ち枯れてしまいます。そのために、農家では20年のうちに木を伐り「萌芽更新」して、新芽を大事に育てていったのです。
【萌芽更新】伐採した木の切り株から新芽を吹かせて、古木から若木に生まれ変わらせることを言います。

雑木林を守る上での配慮

落葉採取の終わる2月から3月の上旬までの期間に伐木を行うことにも、雑木林を守る上での配慮があります。この時期はちょうど木々の成長休止期にあたり伐採しても問題ないのですが、「もし彼岸を過ぎて伐れば新芽の芽吹きが悪くなり、樹木の生育に良くないこと」を人々が認識していたからなのです。

「間伐」「クズハキ(落葉採取)」「伐採」これら冬の間に行う作業を通して、人々は雑木林から恵みを得ると同時に、雑木林を整備したり保全してきたのです。

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