江戸時代末期・百姓代の古民家「旧長崎家住宅主屋(世田谷区立岡本公園民家園内)」のご紹介|古民家を訪ねる旅
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今回は、江戸時代末期・百姓代の古民家「旧長崎家住宅主屋(世田谷区立岡本公園民家園内)」についてご紹介します。
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江戸時代末期・百姓代の古民家「旧長崎家住宅主屋(世田谷区立岡本公園民家園内)」のご紹介
旧長崎家住宅主屋(区指定有形文化財第1号) | |
文化財指定年月日 | 昭和52年8月9日 |
旧所在地 | 世田谷区瀬田2-9 |
復元場所 | 区立岡本公園民家園内 |
復元完了 | 昭和55年3月竣工 |
規模 | 桁 6.5間(11.82m) 梁行 4.5間(7.27m) 総高 8.29m |
延床面積 | 29.9坪(99.0m2) |
江戸時代のこの地は、現在の玉川の町とをあわせて「‵瀬田村」と称し、彦根藩世田谷領(井伊領)20ヵ村の中の1村でした。人口、村高、ともに代官屋敷のあった世田谷村に次ぐ大きな村でした。
長崎家の家歴
長崎本家から分家し、独立した4代目「初代 孫兵衛嘉則」
後北条氏の家臣から土着し「名主」を務める「長崎家」
長崎家は、先祖代々、後北条氏の有力家臣として仕えており、本家初代「重高(慶長元年(1596)没)」の時に瀬田郷の城主となりました。後北条氏滅亡後は当地に土着し、本家は代々瀬田村の名主役を務めました。彦根藩世田谷領でも有数の大名主でした。
後北条氏の領国
分家した6代目「孫兵衛」も村役(百姓代)として活躍する
間取りの変遷
「旧長崎家住宅」の主屋は、昭和52年に解体保管されましたが、その際の間取りは「喰違い(くいちがい)四ツ間取り形式」で、土間境中央には大黒柱が配されていました。
【昭和52年(解体時)の間取り】旧長崎家住宅主屋
何度も増改築を施していた「旧長崎家住宅主屋」
それでは、間取りの変遷について、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
【第1期:江戸時代中期】旧長崎家住宅主屋
解体調査によって明らかになる「主屋増築の様子」
【江戸時代中期(18世紀末頃)間取り】旧長崎家住宅主屋
【江戸時代中期(18世紀末頃)間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | |
デイ | |
ヒロマ |
押板、囲炉裏、座り流し
|
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ
|
この間取りは、江戸期の民家に一般的であった「広間型形式」から「整形四ツ間取り形式」へと移る過渡期の間取りです。
最初につくられた家は、規模が小さい「広間型の間取り」
この時には、解体時に見られた大黒柱のような太い柱は使われず、内部の「デイ」と「ヒロマ」境には、柱に残る痕跡から押板が付けられていたことが確認され、古い形式であったことがわかります。
日本の昔ながらの長さの単位である「尺貫法」 | ||
単位 | 長さ | メートル換算 |
里(り) | 36町(12,960尺) | ≒ 3.927km |
町(ちょう) | 60間(360尺) | ≒ 109.09m |
丈(じょう) | 10尺 | ≒ 3.03m |
間(けん) | 6尺 | ≒ 1.818m |
尺(しゃく) | 1尺(10寸) | ≒ 30.303cm |
寸(すん) | 0.1尺(10分) | ≒ 30.303mm (10/33m) |
分(ぶ) | 0.01尺(10厘) | ≒ 3.030 mm |
厘(りん) | 0.001尺(10毛) | ≒ 303.03 µm |
毛(もう) | 0.0001尺 | ≒ 30.303 µm |
【尺貫法】間(けん)の長さ換算(尺/メートル)一覧 | ||
間(けん)単位 | 尺換算 | メートル換算 |
1 間 | 6 尺 | 1.818 m |
2 間 | 12 尺 | 3.636 m |
3 間 | 18 尺 | 5.454 m |
4 間 | 24 尺 | 7.272 m |
5 間 | 30 尺 | 9.09 m |
6 間 | 36 尺 | 10.908 m |
7 間 | 42 尺 | 12.726 m |
8 間 | 48 尺 | 14.544 m |
9 間 | 54 尺 | 16.362 m |
10 間 | 60 尺 | 18.18 m |
第1期の主屋が建てられた時期
特に、広間型の間取り形式は、関東地方において江戸時代中期18世紀末頃までによく見られることから、この頃に建てられたものと推定されます。
【第2期:江戸時代末期】旧長崎家住宅主屋
【江戸時代後期(文政10年頃)間取り】旧長崎家住宅主屋
【江戸時代後期(文政10年頃)間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | |
カッテ |
囲炉裏、座り流し
|
デイ |
床の間、平書院、戸棚
|
ザシキ | |
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ、置縁
|
「ヒロマ」を「ザシキ」と「カッテ」の2部屋に分ける
土間境には大黒柱や差鴨居(さしがらい)を入れて、1間置きにあった柱を抜いています。特に「ヒロマ」は機能面の上から、中央に差鴨居を用いて建具を入れ、間仕切ることによって、「ザシキ」と「カッテ」の2部屋に分けられました。 また、「デイ」には床の間、平書院、違い棚(二段戸棚)が造り付けられ、格式のある家構えとしています。
江戸時代後期の「喰違い四ツ間取り」
1827年「百姓代」になったことによる「間取りの変化」
代官・大場弥十郎が残した領内の記録「自然賛(しぜんさん)」
この孫兵衛が6代目孫兵衛とするなら、前述した理由から大規模な改築を行うために、代官へ届け出たものと推定されます。
第2期の改築年代は、文政10年(1827)から天保4年(1833)までの間
【第3期:明治時代初期】旧長崎家住宅主屋
期の間取り】旧長崎家住宅主屋
【明治時代初期の間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | 便所 |
チャノマ | 囲炉裏、戸棚 |
カッテ | |
デイ |
床の間、平書院、戸棚
|
ザシキ | |
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ、置縁
|
改築時期について
【第4期:明治時代初期】旧長崎家住宅主屋
【昭和52年(解体時)の間取り】旧長崎家住宅主屋
【昭和52年(解体時)の間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド |
押入、便所1、便所2
|
チャノマ | |
カッテ | 置戸棚、風呂場 |
デイ |
床の間、平書院、戸棚
|
ザシキ | |
ダイドコロ |
置戸棚、ミソ部屋、物置
|
「座り流し」から「立ち流し」へ、「風呂場」や「ミソ部屋」の増築
また、「ダイドコロ」には置き戸棚が置かれていました。この置き戸棚は、移築後、「ナンド」に置かれています。
移築復元について
「江戸時代後期から明治時代初期」の状態を復元
旧長崎家住宅主屋 復元平面図
その結果、当家が最も永く農家としての機能を果たしていたと考えられる、第2期の「喰違い四ツ間取り形式」を基本とし、濡れ縁がない間取りへ戻すことにしました。
世田谷区「岡本公園」へ移設された旧長崎家住宅主屋
公園南側には、六郷用水(次大夫堀)が流れ、北側の崖線上には八幡神社の大木が生い茂るといった、世田谷の原風景が残る絶好の環境です。
「相伝の技術」を受け継いでいる職人たちによる移設工事
1979年、工事半ば「大型台風20号」による主屋の倒壊
こうした苦難を乗り越え、昭和55年3月に旧長崎家住宅主屋は、江戸時代後期に見られる典型的な農家としての屋敷構えを含め、甦らせることができました。なお、旧長崎家住宅主屋の解体及び復元の模様は、文化財記録映画「古民家は語る」「甦える古民家」の中に収められています。
【江戸時代中期(18世紀末頃)間取り】旧長崎家住宅主屋
【江戸時代中期(18世紀末頃)間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | |
デイ | |
ヒロマ |
押板、囲炉裏、座り流し
|
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ
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【江戸時代後期(文政10年頃)間取り】旧長崎家住宅主屋
【江戸時代後期(文政10年頃)間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | |
カッテ |
囲炉裏、座り流し
|
デイ |
床の間、平書院、戸棚
|
ザシキ | |
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ、置縁
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【明治時代初期の間取り】旧長崎家住宅主屋
【明治時代初期の間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド | 便所 |
チャノマ | 囲炉裏、戸棚 |
カッテ | |
デイ |
床の間、平書院、戸棚
|
ザシキ | |
ダイドコロ |
ヘッツイ、オオガマ、置縁
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【明治時代初期の間取り】旧長崎家住宅主屋
【昭和52年(解体時)の間取り】旧長崎家住宅主屋 | |
ナンド |
押入、便所1、便所2
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チャノマ | |
カッテ | 置戸棚、風呂場 |
デイ |
床の間、平書院、戸棚
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ザシキ | |
ダイドコロ |
置戸棚、ミソ部屋、物置
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