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幾筋もの文化の流れと先人の知恵と努力を知ることができる「民具(みんぐ)」についてご紹介|民俗学/古民家を訪ねる旅

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幾筋もの文化の流れと先人の知恵と努力を知ることができる「民具(みんぐ)」についてご紹介|民俗学/古民家を訪ねる旅

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今回は、幾筋もの文化の流れと先人の知恵と努力を知ることができる「民具(みんぐ)」についてご紹介します。

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民具の定義について

民具とはどのような物なのでしょうか。柳田國男編集の「民俗学辞典」では、

「民具は近代的な機械工業による生産物を含まず、主として家々村々でつくられた古風なもの」

と書かれています。この定義に従えば、民具は村人の手作りになる物で、昔から使われてきている物ということになります。

大塚民俗学会編集の「日本民俗事典」でも「民具は民衆が日常生活の必要から制作・使用してきた伝承的な器具・造形物」と、同じような内容の説明をしています。

民具とは

しかし、このふたつの代表的な民俗学辞典の説明ではあまりにも漠然としていますので、宮本常一著「民具学の提唱」の中からもう少し詳しい民具の説明を紹介します。

宮本常一(故人)は、日本における先駆的な民具研究者のひとりとして有名で、次のように民具を定義しています。
【1】民具は有形民俗資料の一部である。
【2】民具は人間の手によって、あるいは道具を用いて作られたものであり、動力機械によって作られたものではない。
【3】民具は民衆が、その生産や生活に必要なものとして作り出したもので、使用者は民衆に限られる。専門職人の高い技術によって作られたものはこれまで普通、工芸品、美術品などといわれ、多くは貴族や支配階級の人びとによって用いられた。これは民具と区別すべきである。
【4】民具は、その製作に多くの手続きをとらない。専門の職人が作るというよりも、人または農業、林業、漁業などのかたわら製作しているものである。
【5】民具は、人間の手で動かせるものである。
【6】民具の素材になるものは草木、動物、石、金属、土などで原則として化学製品は含まない。
【7】複合加工を含む場合は仕上げをするものが、素人または半玄人であるもの。
このように宮本常一はかなり詳しく民具について説明していますけれども、問題が残らないわけではありません。例えば日常の食事に使う「お椀」や「お盆」は、昔は人力のロクロを使って作られていましたが、今では電動の動力機械によって大量生産されています。

製作工程が大きく変わってしまったからといって、お椀やお盆の形や使われ方までも大きく変化したわけではありません。ですから、人力か電力かの違いだけで、民具かどうかを判断することはできないように思われます。

農具のひとつ「箕(み)」
あるいは代表的な農具のひとつに箕(み)があります。この箕を作るには高度な技術が必要なため、専門の人達の手で作られてきました。専門職人の手で作られたからといって、貴族や支配階級の人々の間で使用されてきたわけではなく、箕は大切な農具として農民達によって使用されてきたのです。

ですから宮本常一の言うように、製作者が専門職人か否かで、民具かどうかを判定することはできないでしょう。こうした問題点があるにしても、宮本常一の挙げた7つの指標は、民具を定義するためのおおよその目安になると思われます。

民具の分類

民具は人々が日常生活の中で使用してきたものですから、その種類は多く、数え挙げることができないほどです。そのためか、現在でもきちんとした民具の分類案はなく、研究者によってさまざまな分類方法が採られています。
代表的な民具分類案のひとつ「民具冕集調査要旨」
代表的な民具分類案のひとつとして利用されているものに、アチックミューゼアム(現在の神奈川大学日本常民文化研究所)編「民具冕集調査要旨(みんぐしゅうしゅうちょうさようもく)」があります。

この本では次のように民具を分類しています。

【1】衣食住に関するもの
(1)家具(2)燈火用具(3)調理用具(4)飲食用具、食料と嗜好品(5)衣服(6)履物(7)装身具(8)出産、育児用具(9)衛生保険用具
【2】生業に関するもの
(1)農具(2)山樵(きりこ)用具(3)狩猟用具(4)漁撈(ぎょろう)用具(5)紡績・織物・染色用具(6)畜産用具(7)交易用具(8)その他
【3】通信運搬に関するもの
(1)運搬具(2)旅行用具(3)報知具
【4】団体生活に関するもの
【5】儀礼に関するもの
(1)誕生から元服までに使用する用具(2)婚姻の時に使用する用具(3)厄除に関する用具(4)年祝に関する用具(5)葬式、挙忌に関する用具
【6】信仰・行事に関するもの
(1)偶像(2)幣帛(へいはく)類(3)祭供品・供物(4)楽器(5)仮面(6)呪具(じゅぐ)(7)卜具(うらないぐ)(8)祈願品
【7】娯楽遊技に関するもの
【8】玩具・縁起物
このように民具には多くの種類があり、簡略化してまとめることは困難です。しかしながら、民具研究に限らず、研究対象を分類することは研究を進める上で必要不可欠なこととされています。

では民具研究は何のために行われるのでしょうか。

民具研究の意義

昭和25年に制定された「文化財保護法」では、民俗文化財を「衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋、その他の物件」と規定しています。
そしてこれらの文化財を保存するのは「文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすもの」であるからとしています。

歴史の解明、文化の理解を助けることになる「民具」

民俗文化財の中に含まれる民具に関してもこれを研究することが日本の歴史の解明につながり、日本文化の理解を助けることになると考えられています。

民具をとおして日本人の生活文化の構造と休系、さらには精神構造まで追求しようとするもの
例えば岩井氏は、「民具の概念」という論文の中で、「具体的な民具を通して、その民具を製作した技術、その機能、それをどう人間が使ったか、その民具が他の民具とどうかかわったか、そしてどう変遷したか、その民具は人々の生活にどう影響を及ぼしたか、また次代にどう伝承されていくかということが課題となる。すなわち、民具をとおして日本人の生活文化の構造と休系、さらには精神構造まで追求しようとするものである。」と述べています。
つまり、どのような民具が使われてきたのか。そしてそれらの民具がどこから伝えられたものなのかを研究することで、その地域経済史や他地域との交通・交易史の移り変りが明らかになるのです。さらにはこうした研究が、各地域文化の特質や日本文化の特質を理解する手助けともなります。

ただ、民具は壊れやすく、一度失われると再び得ることが困難なものも多いのです。そのため保存することが必要ですし、壊れても同じ物を作り出すことができるような正確な実測図も必要となります。

唐竿(からさお)について

民具を調査研究することは地域の歴史を明らかにすることであり、地域文化の特質を解明することであるとご説明しました。最後に唐竿を取り上げ、民具研究の意義について具体的に示してみましょう。

唐竿(からさお)について

唐竿の南九州地域での調査研究

唐竿(からさお)は「メグリボウ」「クルリボウ」「ムギウチ」などとも呼ばれる脱穀用の民具で、これで麦や大豆などを叩いて実を落とします。この唐竿を南九州地域で調査研究した民俗学者小野重朗氏が「メグイボウとサーシ=2つの脱殺用具の変異と分布=」という論文を書いていますので、以下、同論文の内容を紹介します。

唐竿のことを鹿児島県と宮崎県南部では「メグイボ」、熊本県では「ブリビヤ」とか「ブリコ」と呼んでいます(これからは統一してメグイボウと呼ぶことにします)。メグイボウの形態と分布地を丹念に調べた結果、4つの型と下図のような分布があることがわかりました。

メグイボウの分布

メグイボウの分布

メグイボウの型

メグイボウの型

メグイボウの型
数本回転型
数本垂下型
一本回転型
一本垂下型
①数本回転型

メグイボウの型

もっとも一般的な型を持つメグイボウで、その分布域も広い。カシ・サクラ・グミなどの細い枝を横に4本から6本ほど並べて固定し、これを長い竹竿の先端部の回転軸に取り付ける。
②数本垂下型

②数本垂下型

南九州のメグイボウの中ではもっとも特殊な形をしており、分布地ももっとも限られている。ツバキ・カシなどの堅い木の、まっすぐな枝2〜3本を2つに折り曲げて束にし、竹竿の先端に取り付けた細縄に結び付ける。
③1本回転型

②数本垂下型

この型のメグイボウの分布地域は相当に広く、薩摩半島と大隅半島に点々とあり、遺跡的ではあるが南の島々にも広がっている。カシなどの直径5cm程の丸太棒を回転軸にはめ込んで固定し「①数本回転型」と同じ方法で竹竿に取り付ける。
④1本垂下型

④1本垂下型

「①の数本回転型」に対して「②の数本垂下型」があるように、「③の1本回転型」に対してはこの「1本垂下型」がある。薩摩半島西南部の加世田市と川辺郡の海よりに集中的に分布するとともに、南西諸島にまで引き続き分布している。
メグイボウの発展
以上のように南九州でメグイボウの型と分布を調べた小野重朗氏は、メグイボウが「④の1本乗下型」から「③の1本回転型」あるいは「②の数本垂下型」へ、そして最後に「①の数本回転型」へと発展していったであろうと結論づけています。
メグイボウの型
メグイボウの型
黎明期 一本垂下型
発展
数本垂下型
一本回転型
最終発展 数本回転型

そしてその変化発展の流れは北から南へ、そして東から西へ、北東から南西へ広がっていったとしています。

メグイボウの分布

先人の知恵と努力
「①の数本回転型」へと発展したのは、もちろんこの型のメグイボウがもっとも効率よく脱穀作業を行うことができるからですが、1つ1つの発展過程には、並々ならぬ先人の知恵と努力があったはずです。
メグイボウの型
幾筋もの文化の流れ
動力機械を使って行われる現在の脱穀作業の背景には、こうした歴史が存在したことを知っておくと非常に参考になります。また、南九州という限られた一地域においても、幾筋もの文化の流れがあったのです。決してその地域だけで文化のすべてが形成されてきたのではありません。

現在では使われることも、目にふれることもなくなったメグイボウという1つの民具を調査研究することで、私達は今まで気づかなかった多くのことを学び、知ることができます。

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