『オホーツクに消ゆ』の誕生 堀井雄二の『ミステリーアドベンチャー』の世界
ご訪問ありがとうございます。
今回は、前回の『ポートピア連続殺人事件』誕生に続いて
堀井雄二さんの『ミステリーアドベンチャー』『オホーツクに消ゆ』誕生をご紹介すます。
『オホーツクに消ゆ』は、『ポートピア連続殺人事件』のミステリーゲームシリーズ、2作目として発表された作品だよ。
そして、堀井雄三さんが発表した『ミステリーアドベンチャーゲーム』
『ポートピア連続殺人事件』
『オホーツクに消ゆ』
『軽井沢誘拐案内』
は、ミステリーシリーズ3部作として言われているんだ。
それでは、まずはじめに
『オホーツクに消ゆ』のオープニングから見てみよう。
『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』オープニング
晴海埠頭に男の水死体が浮かび上がる。
身元は不明。推定年齢40歳前後。
舞台は東京から北海道に。釧路、網走、札幌、紋別、夕張、次々と起こる第二、第三の連続殺人。
複雑な人間関係はいっこうに結びつかない。事件の果てに戦後の闇が明らかになってくる……。
『オホーツクに消ゆ』制作のきっかけは?
『オホーツクに消ゆ』制作のきっかけは、
『ログイン』編集者の塩崎さんからの提案ではじまったんだ。
堀井さん、『ポートピア』も好評ですし、
そろそろ、2作目の『ミステリーゲーム』つくりませんか?
2作目のゲーム?
うーん
それじゃー、ロケハンしません?
ロケハン?、『アドベンチャーゲーム』でロケハンできるの?
うちで、ロケハンの記事掲載してもらえれば大丈夫ですよ。
うーん、いいねロケハン。
どこがいいかねー。
やっぱり、ご飯のおいしいところ、温泉ー。
それじゃー、北海道にしましょう。
カニ美味し、温泉もある。
ということで、北海道にロケハンに行くこと決まったんだ。
グルメと温泉が目当てですか。
ここから『オホーツクに消ゆ』の企画が始まったんだ。
そして、1983年9月、取材チームと楽しい北海道ロケに向かったのであった。
楽しい、北海道ロケを終えた堀井さんは、
2ヶ月後の11月には、ログインにロケハン記事を掲載する。
この頃から、『オホーツクに消ゆ』の具体的なゲーム企画を考えはじめたんだ。
塩崎剛三氏
当時「ログイン」編集部で、堀井氏に『オホーツクに消ゆ』制作とロケハン記事を打診し、自身もロケハンに同行、ゲームのプロデューサーをした。
のちに「ファミコン通信」の二代目編集長なり、クロス・レビューにも登場。そのときのペンネームは東府屋ファミ坊。
堀井氏の当時のコラムで出てくる「S氏」とは塩崎氏のことである。
松本清張風にしてみようかな?
今度の『アドベンチャーゲーム』どうしようかな?
堀井さん、松本清張好きじゃないですか。
そうだな、松本清張原作の「火曜サスペンス劇場」の第1回放送「球形の荒野」もよかったよな。
松本清張の『点と線』のようなアリバイ崩し的なものもいいかもしれないな。
そうだなー。例えば・・・
東京で殺人が起こる。
そして、ある手がかりに北海道に行くというストーリーにしたいな。
『東京』から『北海道』にですか・・
それなら、松本清張の「砂の器」みたいなのはどうです?
「砂の器」では、犯人の手がかりに『東北』に行きますよね。
そういえば、映画の「砂の器」もよかったよね。
・・・・・
こんなあらすじはどうだろう?
東京湾の埠頭に男の水死体が浮かび上がる。
身元は不明。推定年齢40歳前後。
舞台は東京から北海道に。釧路、網走、札幌、夕張・・・
次々と起こる第二、第三の連続殺人。
複雑な人間関係はいっこうに結びつかない。
そして、事件の果てに戦後の闇が明らかになってくる
ってのはどう?
おー松本清張風でいいですね。
ということで、『東京』から『北海道』へ物語が展開されるあらすじに決まり
『オホーツクに消ゆ』は、制作へと進むのであった。
『オホーツクに消ゆ』『軽井沢誘拐案内』の同時制作
『オホーツクに消ゆ』とその後発表する、『軽井沢誘拐案内』は
同時に制作が進められんたんだ。
さすがに、堀井さん一人では、同時にふたつのゲームは作れないということで
『オホーツクに消ゆ』には、プログラマーで上野利幸さんに参加してもらい。
その一方で『軽井沢誘拐案内』堀井さん一人で作ることにしたんだ。
上野利幸氏さんとは
当時「ログイン」のライター。
ペンネームは『ゲヱセン上野』。
本業はライターだが、『オホーツクに消ゆ』ではプログラマーを担当していた。
またファミコン版『オホーツクに消ゆ』や任天堂のいくつかのゲームではサウンドを担当しました。
相棒を入れ替えてみよう
相棒はどうしようかな?
『ポートピア』では、主人公の『ボス』と相棒の『ヤス』との
対話で物語を進めたけど。
同じでは、面白くないし・・
『東京』で事件が起こり、『北海道』ででも事件が・・
うーん、『東京』の警察が、『北海道』の事件も捜査する?
すこし無理があるかな。
やっぱり、『北海道』に行ったら地元の警察が担当するほうがいいよな。
よし、『東京』では相棒が『クロキ』
『北海道』からは、『シュン』に切り替わるようにしよう。
ということで、『オホーツクに消ゆ』では、
『ポートピア連続殺人事件』の相棒『ヤス』から
東京の相棒の『クロキ』はさわりだけで、メインの相棒は現地で
ということになりました。
オチはどうしようかな?
うーむ、物語の『オチ』はどうしようかな?
やはり、ミステリーは『オチ』が重要だからな・・
さすがに『ポートピア』の手は使えないよな。
できれば、『北海道』ロケを活かした物語にしたいよなー。
『ニポポ人形』とか『網走刑務所』とか・・・・
うーむ
ようし、『オホーツクに消ゆ』は
犯人の意外性というより、事件の全容がわかる展開にしよう。
これなら、『北海道』ロケが活かせるし。
なぜ、『コマンド選択』にしたの?
ストーリーも固まってきた頃、
堀井さんは、『オホーツクに消ゆ』では、
ゲームの操作方法を少し変えてみることにしたんだ。
ゲームの操作方法?
そう、『オホーツクに消ゆ』では、それまでの「コマンド入力型」をやめて「コマンド選択型」という方法を考え出したんだ。
これは、当時の『アドベンチャーゲーム』には、
ユーザーが『キーワード』になる単語を考えて、『キーボード』で入力し、
『物語』を進めていくという、「コマンド入力型」が主流だった時代だったんだ。
えー、大変だね。
「コマンド選択型」という方法を考え出したのは、ある体験からなんだ。
ある体験?
そう、それは『ポートピア連続殺人』が発売された時に
堀井さんが、パソコンショップに『店頭デモ』を見に行ったときの体験からなんだ。
その時、『ポートピア連続殺人』の『店頭デモ』で遊んでいるユーザーを発見する。
堀井さんは、そのユーザーの『ポートピア』で遊んでいる画面をの覗いてみた。
うーん、全然前にすすまない・・
その時、堀井さんが見たのは、
ユーザーがコマンドを入力しているんですけど、登録していない単語を入れて、
「ソレハ ワカリマセン」
とコンピューターから返されている風景だったんだ。
それを見た堀井さんは、
日本語って難しいよなー。
英語だと「 I 」だけど、日本語だったら「私」だったり「俺」だったり「僕」だったり色々あるものな。
扉でも「開ける」「開く」とか、言葉の語彙がすごく多い・・・
やっぱり日本語は、言葉のニュアンスが沢山あるから、
『アドベンチャーゲーム』では、『日本語』を言葉を入力させるのは無理だな・・
ゲームをやっていて、お話がどんどん進むような局面では、確かにワクワクするし面白いけど
『キーワード』が思い浮かばなかったりすると、お話がそこでピタリと止まってしまう。
もう何をしていいかわからず、どうやたって先へ進めなくなる。
もう少し、ユーザーにわかりやすい『インターフェイス』にしたほうがいいんじゃないかなー。
いっそのこと、単語と入力するのではなく、単語を選択できるようにして
『物語』を進みやすくしたほうが・・・。
と思って、それじゃ選ぶほうがいいんじゃないかと。
そのほうが入力して「ワカリマセン」って言われるよりはストレスがないだろうし。
作る側でも単語が決まっているから、色んなことを登録する手間も省けて、お互いありなんじゃないかな。
ということで、『オホーツクに消ゆ』では、それまでの「コマンド入力型」をやめて「コマンド選択型」という方法を考え出したんだ。
ユーザーに、『オホーツクに消ゆ』を楽しくゲームできるように工夫したんだね。
「コマンド選択型」は、
それまでPRGの『ウルティマ』や
シュミレーションゲームの『信長の野望』で使われていたんだけど
『アドベンチャーゲーム』では、めずらしかったんだよ。
コマンド選択型の前身
コマンド選択自体はそれまでのRPGやシミュレーションで使われており、またアドベンチャーゲームであっても、
『オホーツクに消ゆ』以前に
『女子寮パニック』や『ミコとアケミのジャングルアドベンチャー』など、
ごく一部のアドベンチャーではコマンド選択は使われていました。
堀井さんは、『オホーツクに消ゆ』では更に、単語を精査し必要なコマンドだけを必要なときにだけ表示するように工夫したんだ。
いわば『コマンド選択』を体系化した感じだね。
この『コマンド選択』は、後に制作する『ドラゴンクエス』にも活かされているんだ。
『ポートピア連続殺人事件』の『コマンド入力型』を更に発展させた『コマンド選択型』を採用した『オホーツクに消ゆ』
そして、この『コマンド選択型』を『ドラゴンクエス』でも採用しているんだよ。
なるほどー。
映画のような演出をやってみようかな?
堀井さんは、『グラフィック』の面でも新しい試みをしているんだ。
『ポートピア』と同じ『グラフィック』の演出じゃ、面白くないなー。
単純な立ち絵だけじゃなくて
なんか、こう『マンガ的表現』がほしいな
引きの画面ばかりじゃ弱いから、アップがあったりとか・・
うーん。
クローズアップが効果的だったり、引きと寄りのメリハリがほしいよな。
ようし、画面構成の絵コンテ描いてみよう
堀井さんは、高校・学生時代の『漫画研究会』時代の経験を活かして
マンガのコマ割表現みたいな流動的な演出も取り入れたんだ。
こうして『オホーツクに消ゆ』では、
演出効果として、ロング・ショット、フル・ショット、バスト・ショット、クローズアップを使い、
さらに、『カットシーン』のような見せ場(コマ割表現)も取り入れられているんだ。
その後、80年代後半からの『アドベンチャーゲーム』では
これらの演出効果が、
更に進化して
『ジーザス』や『スナッチャー』、『ミスティ・ブルー』や『ポリスノーツ』のように
海外にはない独自の映画的な『アドベンチャーゲーム』が日本で花開いていくだ。
ファミコン版『オホーツクに消ゆ』のデザイン
ちなみに、『ファミコン移植版』は
イラストレーター荒井清和氏がキャラクターデザインに起用され、
『劇画調』から『少年漫画的』な表現に変わり。
以降、ファミコンの『アドベンチャーゲーム』はそれに習った『キャラクターデザイン』が採用されるようになったんだ。
『オホーツクに消ゆ』の発売。
そして、
1983年9月の『北海道ロケ』から約1年経過した、1984年12月。
『オホーツクに消ゆ』は、PC6001から発売されることになる。
そして、1987年にはファミコン版『オホーツクに消ゆ』が発売されるんだ。
『オホーツクに消ゆ』ファミコン移植については、
別ページで投稿してますので、是非ご覧ください。
今回は、ここまで、
次回は、『オホーツクに消ゆ』と同時に制作された、
堀井さんのもうひとつの『ミステリーアドベンチャーゲーム』
『軽井沢誘拐案内』の誕生
をご紹介します。
ご閲覧ありがとうございました。