キングセイコーとは何だったのか‐勝者ではないが、敗者でもない“もう一つの完成形”

キングセイコー(King Seiko / KS)は、 1961年から1975年まで製造された、セイコーの高級機シリーズです。
・製造期間 約15年間
・主な製造元 第二精工舎(亀戸)
・後期に一部 諏訪精工舎
・位置づけ 👉 グランドセイコー(GS)に次ぐ高級ライン
・主な製造元 第二精工舎(亀戸)
・後期に一部 諏訪精工舎
・位置づけ 👉 グランドセイコー(GS)に次ぐ高級ライン
現在は製造終了していますが、
「かつての高級機が、現在は比較的手に取りやすい価格で楽しめる」
という点で、ヴィンテージ入門として非常に評価の高いシリーズです。
「かつての高級機が、現在は比較的手に取りやすい価格で楽しめる」
という点で、ヴィンテージ入門として非常に評価の高いシリーズです。
第二精工舎と諏訪精工舎の二極構造
セイコーは1960年代、 同一企業内で2つの精工舎を競わせるという極めて特殊な体制を取っていました。
基本対応関係(重要)
| カテゴリ | 第二精工舎 | 諏訪精工舎 |
|---|---|---|
| ベース | Cronos | Marvel |
| 薄型 | Goldfeather | Liner |
| 普及 | Champion | Sportsman |
| 高級 | King Seiko | Grand Seiko |
👉
KS=第二精工舎のフラッグシップ
GS=諏訪精工舎のフラッグシップ
という明確な役割分担がありました。
KS=第二精工舎のフラッグシップ
GS=諏訪精工舎のフラッグシップ
という明確な役割分担がありました。
KS / GS を分ける思想的違い
1960年代のイメージは
・GS(諏訪) → 自動巻中心・量産と安定性
・KS(第二) → 手巻中心・高精度と構造的こだわり
・GS(諏訪) → 自動巻中心・量産と安定性
・KS(第二) → 手巻中心・高精度と構造的こだわり
そのため、 KSの手巻モデルに強い人気があるという現状は、 当時の設計思想を正しく反映しています。
ムーブメント系列から見るキングセイコーの進化
キングセイコーは「1つの時計」ではなく、 時代ごとにムーブメントが変わるシリーズです。
使用ムーブメント系列
第二精工舎(主流)
・44系(手巻)
・45系(手巻・10振動)
・52系(自動巻・薄型高級)
・44系(手巻)
・45系(手巻・10振動)
・52系(自動巻・薄型高級)
諏訪精工舎(後期)
・56系(自動巻・8振動)
・56系(自動巻・8振動)
このため、 44KS / 45KS / 52KS / 56KS という呼び方が一般的になっています。
初代キングセイコー(1961年)
・幅広のバーインデックス
・堂々とした文字盤
・裏蓋に盾マーク+王冠
・堂々とした文字盤
・裏蓋に盾マーク+王冠
当時の価値観では、
「インデックスが太い=貴金属を多く使っている=高級」
という認識があり、 “キング”を名乗るにふさわしい威厳を備えていました。
「インデックスが太い=貴金属を多く使っている=高級」
という認識があり、 “キング”を名乗るにふさわしい威厳を備えていました。
44KS クロノメーターの革新性
表記について
・クロノメーター表記あり
・ただし 公式認定ではなく社内規格
・クロノメーター表記あり
・ただし 公式認定ではなく社内規格
それでも、 当時の最高精度を狙った特別調整品であることは間違いありません。
最大の技術的トピック
セイコー初の「秒針規制装置」搭載 しかも方式が特殊で、
・鎌状レバーが
・4番車(秒針を動かす歯車)を直接止める という構造です。
・鎌状レバーが
・4番車(秒針を動かす歯車)を直接止める という構造です。
👉 この 鎌状レバー式秒針規制 は
・44KSクロノメーター
・44KS前期 にしか存在しない、
極めて希少な機構です。
・44KSクロノメーター
・44KS前期 にしか存在しない、
極めて希少な機構です。
44KS 通常モデル(前期・後期)
| 区分 | 特徴 |
|---|---|
| 前期 | 鎌状レバー/盾マーク |
| 後期 | 改良型規制/KSメダル |
鎌状レバーは折れやすい欠点があり、
後期型では別方式に変更されています。
後期型では別方式に変更されています。
45KS ― 技術的ピーク
・10振動(ハイビート)
・KSとGSにしか使われなかった専用ムーブメント
・1968年登場
・KSとGSにしか使われなかった専用ムーブメント
・1968年登場
高振動による精度向上は、 当時としては最先端。
ケースも、
・定番の7000系
・個性的な8000系(刃物のような造形、座布団ケース) など、高級機としては異例の多様性を持ちます。
・定番の7000系
・個性的な8000系(刃物のような造形、座布団ケース) など、高級機としては異例の多様性を持ちます。
56KS ― 自動巻キングセイコーの完成形
・諏訪精工舎製
・8振動ハイビート自動巻
・ケース・文字盤バリエーションが非常に豊富
・8振動ハイビート自動巻
・ケース・文字盤バリエーションが非常に豊富
📌 実用面での評価
・部品が比較的多い
・メンテナンスしやすい
・現存数が多い
👉 「長く使うKS」として最も現実的な選択肢です。
・部品が比較的多い
・メンテナンスしやすい
・現存数が多い
👉 「長く使うKS」として最も現実的な選択肢です。
52KS ― 知る人ぞ知る後期の傑作
・第二精工舎製
・自動巻・薄型高級
・生産数が少なく希少
・自動巻・薄型高級
・生産数が少なく希少
重要な系譜
52系 → 1990年代に 4Sムーブメントとして復活 (SUS/アルピニスト/ローレル/クレドール)
52系 → 1990年代に 4Sムーブメントとして復活 (SUS/アルピニスト/ローレル/クレドール)
👉 現代セイコー高級機の源流です。
VANAC ― キングセイコーの終章
・若者向け
・カラフルな文字盤
・カットガラス
・フーデッドラグ(ラグなし)
・カラフルな文字盤
・カットガラス
・フーデッドラグ(ラグなし)
1970年代デザインの極致であり、 同時に 機械式キングセイコーの終わりを象徴します。
ケースデザインから見る時代性
| 時代 | 特徴 |
|---|---|
| ~1950s | 細ラグ |
| 1960s前半 | 太く尖ったラグ |
| 1960s後半 | Cライン |
| 1970s | フーデッドラグ |
KSは、 ケースデザイン史の教科書としても非常に優秀です。
総まとめ
キングセイコーとは、
・第二精工舎の技術的誇り
・GSとは異なる高級機の答え
・現代でも実用可能
・物語性と選択肢が豊富
・GSとは異なる高級機の答え
・現代でも実用可能
・物語性と選択肢が豊富
という、非常にバランスの取れたヴィンテージ高級時計です。
名言 「キングセイコーとは、 勝者ではないが、敗者でもない“もう一つの完成形”である。」
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