- AI Nikkor 50mm F1.8S の“時代背景”‐EM〜F3世代をつなぐ“戦略的パンケーキ”
- 1️⃣ 時代の空気 小型一眼レフ戦争の真っ只中
- 2️⃣ ニコン側の事情 F3 と EM、そして Series E
- 3️⃣ 光学設計的な背景 「ガウスは小型化に向かない」をひっくり返す
- 4️⃣ 経済的・商品戦略としての位置づけ
- 5️⃣ 写りと“時代感”のシンクロ
- 🧭 まとめ（超要約）
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AI Nikkor 50mm F1.8S の“時代背景”‐EM〜F3世代をつなぐ“戦略的パンケーキ”
AI Nikkor 50mm F1.8S の“時代背景”を、ザックリ言うと
「ニコンが F3 と EM の二正面作戦で、
プロ用とエントリー用を一気に固めにきたタイミングで生まれた、 “薄くて安いけど写りは本気”な標準レンズ」
プロ用とエントリー用を一気に固めにきたタイミングで生まれた、 “薄くて安いけど写りは本気”な標準レンズ」
という感じになります。順番にご紹介します。
1️⃣ 時代の空気 小型一眼レフ戦争の真っ只中
AI Nikkor 50mm F1.8S の光学設計は 1970年代後半、 発売は 1980年前後〜80年代初頭 のラインです。
この頃の大きな流れは
各社とも
・「小型・軽量・お手頃価格の一眼レフ」
・「でも写りはちゃんと良くないと売れない」
・「小型・軽量・お手頃価格の一眼レフ」
・「でも写りはちゃんと良くないと売れない」
・オリンパス OMシリーズ、ペンタックス MX/ME など
→ コンパクトボディ＋小さいレンズ が大人気
→ コンパクトボディ＋小さいレンズ が大人気
・一方で、プロ向けには ・堅牢で大きめなフラッグシップ機（Nikon F2 → F3）
つまり市場は
・「プロの道具としてのゴツい F一桁」
・「一般ユーザー向けの小さくて軽いボディ」
・「プロの道具としてのゴツい F一桁」
・「一般ユーザー向けの小さくて軽いボディ」
この 二極化が一気に進んでいた時代 です。
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2️⃣ ニコン側の事情 F3 と EM、そして Series E
このレンズの裏には
・Nikon F3（プロ機）
・Nikon EM（エントリー機）
・レンズシリーズ E（廉価コンパクトレンズ群） という 3つのプロジェクトが同時進行していました。
・Nikon F3（プロ機）
・Nikon EM（エントリー機）
・レンズシリーズ E（廉価コンパクトレンズ群） という 3つのプロジェクトが同時進行していました。
● Nikon EM ＆ レンズシリーズE
・EM は「小型・軽量・廉価な Nikon」という戦略商品
・その EM 向けに企画されたのが
→ Nikon Lens Series E 50mm F1.8
・その EM 向けに企画されたのが
→ Nikon Lens Series E 50mm F1.8
日本未発売ですが、この E 50/1.8 と AI 50/1.8S は光学設計が共通 です。 Eシリーズ用に設計
→ 仕上げ・鏡筒・コーティングを変えて
→ 仕上げ・鏡筒・コーティングを変えて
ニッコール銘の AI Nikkor 50mm F1.8S（パンケーキ） としても展開した、という流れがりました。
● 宿題 50mm F2 の置き換え問題
当時の普及標準レンズは
・50mm F2（小型・安価）
・もう一段上に 50mm F1.4
・50mm F2（小型・安価）
・もう一段上に 50mm F1.4
しかし市場トレンドは
・各社「F1.8 が普及標準」へ移行
・F2 はスペック上 “見劣り” し始める
・各社「F1.8 が普及標準」へ移行
・F2 はスペック上 “見劣り” し始める
そこでニコンは
・「F2 をそのまま外装変更して延命」ではなく
・“より明るい F1.8 かつ F2 より小さい” というむちゃ振りスペックを目標にしたわけです。
・「F2 をそのまま外装変更して延命」ではなく
・“より明るい F1.8 かつ F2 より小さい” というむちゃ振りスペックを目標にしたわけです。
→ これが パンケーキ 50mm F1.8S 誕生の直接の背景 です。
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3️⃣ 光学設計的な背景 「ガウスは小型化に向かない」をひっくり返す
50mmクラス標準レンズの主流は ダブルガウス型。 ただし昔から設計者の中では
「ガウスタイプはある程度長さが必要。 > コンパクトにしにくい。」 という“常識”がありました。
● 50mm F1.8S のトリック
・絞り位置まわりを ギュッと詰めた（絞り間隔を狭く）
・第2・第5レンズを 思い切って薄く
その代わりに
・バックフォーカスを稼ぎつつ
・収差補正も成立させるように再設計
・第2・第5レンズを 思い切って薄く
その代わりに
・バックフォーカスを稼ぎつつ
・収差補正も成立させるように再設計
結果として
・50mm F2 より 3mm以上短い全長
・なのに F1.8 で
・歪曲も少なく、コマ収差もよく抑えた
・50mm F2 より 3mm以上短い全長
・なのに F1.8 で
・歪曲も少なく、コマ収差もよく抑えた
という、「小さいのにちゃんと写る」パンケーキ標準ができあがります。
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4️⃣ 経済的・商品戦略としての位置づけ
このレンズには、明確な商品戦略上の役割がありました。
● EM + Series E を支える “写り担当”
・EM＋Series E だけだと → 「安いニコン」という印象で終わるリスク
・そこで
→ 同じ光学系を ニッコール銘・金リング無し
・パンケーキ鏡筒 で仕立て直し
→ F3/FE/FMユーザーにもアピールできる
→ 同じ光学系を ニッコール銘・金リング無し
・パンケーキ鏡筒 で仕立て直し
→ F3/FE/FMユーザーにもアピールできる
つまり
・「小さくて安いけど、ニッコールとして胸を張れる絵が出る」
・という ブランドイメージの橋渡し役 だった、という背景があります。
・「小さくて安いけど、ニッコールとして胸を張れる絵が出る」
・という ブランドイメージの橋渡し役 だった、という背景があります。
● AF時代まで生き延びた設計
さらにこの光学設計は、
・AI Nikkor 50mm F1.8S（パンケーキ）
・→ AI AF Nikkor 50mm F1.8S
・→ AI AF Nikkor 50mm F1.8D と AF時代まで引き継がれるロングライフ設計 になります。
・→ AI AF Nikkor 50mm F1.8S
・→ AI AF Nikkor 50mm F1.8D と AF時代まで引き継がれるロングライフ設計 になります。
つまり 「MF末期〜初期AFをまたいで現役でいられた設計」 という意味でも、 1980年代の転換期を象徴するレンズのひとつです。
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5️⃣ 写りと“時代感”のシンクロ
当時のユーザーがこのレンズに求めたのは
・絞れば → 信頼できるシャープネス（街・旅・スナップなんでもいける）
・開放では → 少しフレアをまとった柔らかさ（ポートレートや花など）
・開放では → 少しフレアをまとった柔らかさ（ポートレートや花など）
・F1.8 柔らかめ・フレア乗り
・F4〜F8 カチっとして歪曲も少ない
という “絞りでキャラクターが変わる万能標準”。
・F4〜F8 カチっとして歪曲も少ない
という “絞りでキャラクターが変わる万能標準”。
これは、
・「1本で何でも撮りたい」
・「でも荷物は軽くしたい」
・「1本で何でも撮りたい」
・「でも荷物は軽くしたい」
という FM/FE/EM ユーザーの実用志向 に、かなりハマっていたはずです。
🧭 まとめ（超要約）
AI Nikkor 50mm F1.8S の時代背景を一言でまとめると
小型一眼レフ戦争の中で、 『薄くて安いのに写りは真面目』という ニコンらしい標準レンズ像を体現した一本。 EM〜F3世代をつなぐ“戦略的パンケーキ”。
🌟 最後にひと言（名言）
「道具が小さくなっても、写真への本気度は小さくしなくていい。」
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