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AI AF Nikkor 80mm F2.8S ― ニコン初の本格AFレンズが変えたもの

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AI AF Nikkor 80mm F2.8S ― ニコン初の本格AFレンズが変えたもの

 「ニコン初の本格AFシステム・F3AF用に作られた AI AF Nikkor 80mm F2.8S」は、 まだピント合わせが手動(MF)だった時代に、ニコンが未来を見据えて投じた一本の中望遠レンズです。

ざっくり言うと、こんなレンズです。

・まだ「ピントは手で合わせる」が当たり前だった時代に
・将来のAF時代を見据えて
・光学・電気・機構という“三本の矢”を一本の鏡筒に詰め込み
・AF時代の到来を先取りした、かなり野心的な中望遠レンズ

1. F3AF と AI AF 80mm F2.8S の位置づけ

1-1. F3AF と同時に登場した「2本のAFレンズ」

1983年4月、ベストセラー機だったマニュアル一眼レフ Nikon F3 に 専用AFシステムを組み合わせた F3AF が登場しました。
このとき同時に発売されたAFレンズが、次の2本です。
種別 レンズ名 役割・狙い
中望遠ポートレート系 AI AF Nikkor 80mm F2.8S 人物・物撮り用、中望遠・高画質
望遠・報道系 AI AF Nikkor ED 200mm F3.5S スポーツ・報道寄りの望遠レンズ
AI AF 80mm F2.8S は、F3AFシステムの“標準中望遠”のポジションを担うレンズだったと言えます。

 1-2. AFレンズの「中身」が変わった瞬間

それまでの交換レンズは、主役がほぼ「ガラス(光学系)」でした。 しかし F3AF用のAFレンズからは、レンズの中身がガラッと変わります。

従来のMFレンズ(主に) F3AF用AFレンズ以降(必須要素)
光学系(レンズガラス) 光学系(レンズガラス)
電気回路(制御系)
モーター(AF駆動)
鏡筒設計(それらをすべて収める設計)
他社の初期AFレンズは、鏡筒横に四角い出っ張りボックスが付いたようなデザインも多く見られましたが、 ニコンの設計陣は妥協しませんでした。
 「レンズはあくまで“円筒形”であるべきだ。
 出っ張り無しで、なんとしてもすべて鏡筒内部に収める!」
この「レンズ屋魂」で光学・電気・機構を一体化させた結果、
AI AF 80mm F2.8S は
 約20年後のAFニッコールの姿を先取りした“原型”の一本 として位置づけられます。

2. 設計者・藤江大二郎さんと開発背景

2-1. 光学設計は1981年時点で完了していた

AI AF Nikkor 80mm F2.8S の光学設計は、 1981年の夏にはすでに完了していました。

年代・時期 出来事
1981年夏 AI AF 80mm F2.8S の光学設計ほぼ完了
1983年4月 F3AF本体とともに AF 80/2.8S, AF 200/3.5S 発売
 F3AF 発売よりかなり早い段階から、 「レンズ内部モーター+電装を前提にしたAFレンズ」の構想が動き始めていたことがわかります。

 2-2. 藤江大二郎さんとはどんな人か

藤江さんの人物像

項目 内容
性格 温和・明るい・自己主張控えめ
写真への情熱 大学時代から撮影・現像・プリントを自分で行い、白黒カレンダーを毎年制作
活動 卒業後も写真サークルを継続、個性的なメンバーと作品制作を続ける
担当領域 カメラレンズ、エルニッコール、産業用レンズ、ファインダー光学、装置用特注レンズなど
受賞 2001年 アカデミー科学技術賞(アカデミー技術賞)を受賞
エピソード ビバリーヒルズでの授賞式へ奥様と参加。「俳優と同じ種類のリムジンに乗れた!」と無邪気に喜ぶ
「俳優と同じ種類のリムジンに乗れた」と 少年のように目を輝かせる姿からも、  好奇心と遊び心にあふれた“写真好きの技術者” という人柄がよく伝わってきます。

3. 光学設計 ― ガウスタイプ+リアフォーカス+近距離補正

 3-1. 基本構成 典型的ガウスタイプ

断面図を見ると、AI AF 80mm F2.8S は 対称型のガウスタイプを基本とした構成であることがわかります。
ガウスタイプの特徴を

項目 内容
長所 撮影距離による収差変動が比較的小さい
マクロ/マイクロレンズのベースにしやすい
課題 近距離でのコマ収差・球面収差劣化が出やすい
大口径+高性能を追求すると設計の難度が上がる

3-2. AFレンズならではの制約

 AFレンズでは、
・モーターでレンズ群を駆動するため
・動かすレンズ群はできるだけ軽くしたい
という強い制約があります。
 「重いレンズをドカッと動かす設計」 
ではなく
 「軽くて小さい群を、うまく設計して必要な収差補正も同時にこなす設計」
が求められました。

3-3. 解答 リアフォーカス+近距離補正

藤江さんが出した答えが、次のような発想です。

 「後群だけでピント合わせをしながら、近距離補正も同時にこなす  リアフォーカス方式」
ポイントは以下の通りです。
要素 内容
合焦の主役 最後端の凸レンズ(リア側)
問題点 その1枚だけを動かすと像面湾曲・非点収差の変動が大きすぎる
工夫 各レンズの屈折力を最適化し、絞り後方の接合凹レンズを独立可動にする
狙い 近距離で悪化する収差を、可動レンズ群の働きで“打ち消す”ような設計
この設計思想は、後に
・AI AF Nikkor 85mm F1.8S
・AI AF Nikkor 85mm F1.4D (IF)
といった中望遠レンズへ受け継がれ、 現代のAFニッコールにもつながっていきます。

4. 描写特性 ― マイクロニッコール級のシャープさと良好なボケ

4-1. 設計上の収差バランス

光学設計書を読み解いた結果、AI AF 80mm F2.8S の収差バランスは次のようにまとめられます。
収差種別 傾向・特徴
球面収差 量が小さく、あえてややアンダー気味に残している
像面湾曲 若干マイナス側に残存
非点収差 非常に少ない
コマ収差 非常によく抑えられている
色収差 ごく小さい範囲に収まり、実用上ほとんど気にならない
近距離変動 最周辺の像面湾曲が少し動く程度で、非点収差はほぼ変化しない
このバランスに、リアフォーカス+近距離補正の効果が合わさることで、
 ・ポートレートや物撮りでトーン再現が良好
 ・背景のボケもきれい
という、“理想的な中望遠の描写” にかなり近い特性を持ったレンズとなっています。

4-2. 実写描写(遠景)

遠景の実写結果は、F値全域で非常に優秀です。

条件・F値帯 描写傾向
開放〜最小絞り 被写界深度によるボケ以外はF値を特定しにくいほど、どの絞りでも高いシャープネス
開放F2.8 すでに十分なシャープさ・コントラスト。マイクロニッコールと見間違えるレベル
絞り込んだ場合 徐々に硬調寄りの描写になる傾向あり
適した使い分け ポートレート:開け気味/風景:やや絞り気味が好結果とされている
F16〜32 回折の影響で、徐々にシャープネス低下

 実用上の最大の弱点 ― 対応ボディの狭さ

AI AF 80mm F2.8S の唯一にして大きな弱点は、対応ボディが非常に限られることです。

そのため、
「設計・描写は一級品なのに、活躍できる場はきわめて限られた“過渡期の名レンズ”」 という、少し切ない立ち位置のレンズでもあります。
🌟 最後に一つ、レンズと技術者に似合う名言を 「技術とは、好奇心に支えられた愛情のかたちである。」

AI AF Nikkor 80mm F2.8S は、 まさに“写真が好きな技術者”が、未来の姿を思い描きながら、 光学・電気・機構を一本の鏡筒に詰め込んで作り上げた一本だったのだと思います。

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レンズ・マウントtopマウント レンズ メーカー別 市場 修理 モノづくり
マウント
マウント 歴史
スクリューマウント 歴史
バヨネットマウント 歴史 F
ライカ 歴史 M vs L ロシアレンズ Lマウントアライアンス
キャノン(EF 葛藤 )ニコン F
アダプタ
ミラーレス ニコン(FTZ 社外アダプタ)
レンズ
基礎 概要
ピント 中心1点AF 目にピントを合わせる
F値
焦点距離 単焦点 vs ズーム 露出の三角形 画角 焦点距離/被写界深度 AFマイクロ調整 ピント範囲の数値比較
レンズ/カメラ設定 概要 カメラのF値設定
F2.8 F2.8レンズ→F5.6撮影 ピント 対策 F4レンズ比較
F2.8‐200mm 室内舞踊撮影 被写界深度
カメラとレンズ 歴史(概要 カメラ) 大三元・小三元 概要 歴史 レンズ戦略
構造 性能 暗所撮影
F値 概要 価格 明るいレンズ ボケ 被写界深度
【デザイン】
歴史
 概要 ニコン キャノン シグマ タムロン ミノルタ(Rokkorソニー 比較
刻印 概要 ニコン キャノン シグマ タムロン
ニコン 歴史 刻印
キャノン
歴史 Lレンズ 刻印
【技術】
歴史
電子化
3大要素(概要 早見表) 電子接点 AFモーター 電子絞り
歴史 メーカー別(ロードマップ アプローチ 名マウント)
電子接点(概要 歴史 通信プロトコル 仕様) CPUレンズ(ニコン )
AFモーター 概要 歴史 ニコン(歴史 AF-D AF-S 比較)
電子絞り
EXIF情報(概要 歴史)
レンズガラス 歴史(戦争) 色収差(歴史光のにじみ EDレンズ(歴史 比較 金属製鏡筒)
メーカー別レンズ
光学 メーカー 一覧
歴史 戦争 一覧
ドイツ Carl Zeiss 分裂と再統
ソ連 歴史 沿革 冷戦秘話 ソ連崩壊(商標問題) 中華コピー 比較(日本) LOMO
日本 歴史
キャノン 歴史 FD nFD Lレンズ 概要 白レンズ
ニコン
ニッコールとは 歴史 隠れた名玉(厳選リスト F)
オールドレンズ 互換性 コンボ集 金属鏡筒
MF時代
EL-NIKKOR
概要 D750で撮影
1960〜1977 Auto NIKKOR(ノンAi)概要 Auto 歴史 一覧 Ai化改造 NIKKOR-Q
1977〜1981 Ai 概要 AI化 一覧 音と感触 Zマウント AIとAI-Sの違い 35mm F1.4S
1981年〜 AI-S(概要 歴史 TOP10 一覧 見分け方 描写比較 3本セット 操作の“極致”
Series E
1986年〜 AF時代
歴史 80mm F2.8S AF-D AF-S 比較)
 AF-D
仕組み 歴史 一覧 名玉 互換性 活用 金属パーツ(概要 )
単焦点中望遠 180mm f/2.8 系譜 AI D EDレンズ(歴史 比較 金属製鏡筒)
300㎜ H 300mm F2.8
AF-S(仕組み 歴史)
用途別
ポートレート
歴史 オススメ 50mm/85mm/135mm 2本選び
50㎜ Auto F1.4 レンジファインダー AI F1.8S Ai-s F2
35-70mm F2.8S
85mm 歴史 f/1.8 比較 AF F1.4D
105㎜ Ai F1.8S
135mm f/2.8 概要 Auto Ai F2 F2S
単焦点中望遠 180mm f/2.8 系譜 AI D EDレンズ(歴史 比較 金属製鏡筒)
広額 建築撮影 概要 24㎜ Auto 28㎜ F3.5 F1.4D 2.8S
マクロレンズ
ニコン(歴史) 比較(60mm・105mm)
105㎜ F2.8S f2.8D
60mm F2.8S F/2.8 等倍 WD
撮影方法
オールドレンズ 操作方法 フォーカスエイド(仕組み 設定方法)
サードパーティ
概要 歴史 比較
シグマ
歴史 完全日本国内生産
タムロン
概要 歴史 生産性体制 純正超え
シリーズ 概要 歴史 SP(概要 歴史 タムキュー)
モデル名 概要 歴史
デザイン 概要 歴史 シグマ比較
名玉・オールドレンズ
名玉
概要 歴代 相場(高騰)
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キャノン 概要
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隠れた名玉
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中古市場 概要 歴史 相場の変遷 メーカー別 買い時 狙い目
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東京
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視覚芸術
概要 歴史(世界 日本) 写真との関係 絵画比較 社会構造(視覚芸術 写真)
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露出計算の法則
概要 歴史 EV値(初期値) 光量(歴史 ストロボ/暗所撮影/高感度撮影) 照度
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・晴天=F16感度分の16 1/400秒 歴史 経験露出表(歴史 APEXシステム 詳細)
・薄曇り=F11 1/400秒
・曇天=F8 中庸の絞り
・日陰=F5.6 1/60秒 シャッター速度比較 1/60秒と1/125秒 F4比較
F4 1/125秒

心理学
概要 記憶のトリガー  感情を喚起するツール 無意識を表す鏡 視線と認知の訓練 自己理解と共感
ゲシュタルト原則
要素
構図 感情 科学
ライティング 概要
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光を読む技師(概要 マスタープリンター Georges Fèvre Pierre Gassmann Pierre Boucher Voja Mitrovic)
ポートレート
 概要 歴史(世界 日本 写真家)芸術写真運動
黄金比 ISO400・1/60秒・F5.6
フェルメール(光の使い方 トランジションゾーン ハーフトーン 性質による変化 北向き光 スカイライト 面光源 空気の厚み 光の入射角60° 減衰曲線 相対光強度 )

写真雑誌 歴史(TV) Camera Work スティーグリッツ LIFE VU
報道写真 LIFE (歴史 暗室 ピクチャーエディター John Loengard LIFEトーン ) Picture Post

スナップ写真 歴史 絶対非演出の絶対スナップ
フォトダイアリー
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写真家
ピクチャー・エディター
概要 名編集者
ポートレート 戦場カメラマン(歴史 代表作) 報道カメラ
日本
木村伊兵衛 概要 経歴 秋田 ライカ 名言
土門拳 概要 写真哲学 仏像
フランス 概要 マグナム・フォト
ブレッソン 概要 経歴 名言 哲学 構図 動きと流れ 三分割法 ライカ(概要 機材 Model A II/III M3 レンズ) フィルム(概要 一覧 目は光と形を同時に追えない 戦前 Kodak Tri-X Pan ASA 400)
アメリカ
スティーグリッツ 名言 
カメラ
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国別 ドイツ 日本
ドイツ 歴史 Leica Zeiss Contax Rollei Voigtländer レンジファインダー
Leica 歴史(概要 M デジタルM)
日本
歴史
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商品シリーズ 一眼レフ(主要 フィルム デジタル ミラーレス)
キャノン
(シリーズ F EOS 5D 7D)
7D シリーズ Mark II 概要  AF 概要 AIサーボAF
商品シリーズ 一眼レフ(主要 フィルム デジタル ミラーレス)
ソニー
歴史(概要 )
商品シリーズ 一眼レフ(主要 フィルム デジタル ミラーレス)
富士フィルム(シリーズ)
オリンパス(シリーズ) ペンタックス(シリーズ)
リコー 歴史
コシナ 歴史
レンジファインダー
【バッテリー】
概要 歴史 セット BMS IC構成
ニコン 歴史 型番別 モデル別 EN-EL15系(歴史 構造)
LP-E6N(概要 給電構成)
互換バッテリー
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ロワ・ジャパン(概要 歴史 型番ごとの歴史 偽物の見分け方 偽物トラブル 偽装を見破る)
高級コンデジ
概要 ソニー(RX) リコー(歴史 GR)
リコーGRシリーズ
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