フォークオイルはサスペンション内部の減衰力を制御する“血液”のような存在

フォーク径・車格・用途に応じて適した粘度(番手)を選ぶことで、乗り味・制動安定・接地感が劇的に変わります。
🧭 フォークオイルの役割
| 機能 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 減衰力(ダンピング)制御 | オイル通路を流れる速度で動きを抑制 | 「伸び・縮み」の動きを滑らかにする |
| 潤滑・冷却 | 金属摩擦部を潤滑し熱を分散 | フォーク寿命を延ばす |
| 防錆・洗浄 | 内部の酸化・金属粉を防止 | 作動性を安定化させる |
| 密閉補助 | シールの潤滑性を高める | オイル漏れ防止にも寄与 |
⚙️ 番手(W)と粘度の関係
| 表示 | 動粘度(cSt@40℃)目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 5W | 約16〜22 | 柔らかく、動き出しが軽い。街乗り向き。 |
| 7.5W | 約24〜30 | 標準よりややソフト。軽量車・細径フォークに適。 |
| 10W | 約30〜35 | 一般的な標準番手。多くのネイキッド/SSが採用。 |
| 15W | 約40〜45 | 減衰強め。スポーツ走行・重車体向き。 |
| 20W | 約50〜60 | 減衰が重く、サーキット/大排気量向け。 |
💡メーカーによって同じ“10W”でも粘度(cSt値)が違うため、 ブランド間での混合や単純比較は避けるのが基本です。
🧩 フォーク径と推奨オイル番手(参考表)
| フォーク径 | 採用車種例 | 標準番手 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| φ33〜37mm | SR400/CB250/VTR250 | 5W〜10W | 軽量で柔らかめの動きが好ましい |
| φ41mm | CB400SF/XJR400/MT-07 | 10W | バランス重視の標準 |
| φ43mm | CB1300SF/ZRX1200/Z900RS | 10W〜15W | 安定性重視、やや硬め設定 |
| φ45〜46mm | CBR600RR/GSX-S1000 | 15W | 高速走行・サーキット向け |
| φ48〜49mm | YZF-R1/Panigale V4 | 15W〜20W | レーススペック、減衰強め |
| φ35mm以下 | クラシック車・オフロード | 5W〜7.5W | 軽く反応する設定が理想 |
🛠 オイル選定の考え方
| 条件 | 推奨方向 | 理由 |
|---|---|---|
| 軽量車・街乗り中心 | 柔らかめ(5W〜10W) | 路面追従性を優先 |
| 高速道路・2人乗り | 標準〜やや硬め(10W〜15W) | 制動・安定性を確保 |
| スポーツ走行/峠 | 15W〜20W | ノーズダイブ抑制、レスポンス重視 |
| 旧車・クラシック系 | 5W〜7.5W | オリジナル乗り味重視 |
| サーキット/重車体 | 15W〜20W | 減衰強化による接地安定性向上 |
🧴 代表的なフォークオイルメーカーと特徴
| メーカー | 特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| SHOWA SS-8 / SS-7 | 純正指定率No.1、安定粘度 | Honda・Kawasaki純正採用多数 |
| KYB G10S / G15S | 減衰安定性高く、サーキット適性◎ | YAMAHA・SUZUKI系車両 |
| WAKO’S Fork Oil T500シリーズ | 高温でも粘度変化が少ない | メンテナンス性◎ |
| MOTUL Fork Oil Expert | 番手のばらつきが少ない | 世界標準的ブランド |
| LIQUI MOLY / ELF / Bel-Ray | 欧州車・Ducati・BMWなどに定評 | スムーズな動き出し重視 |
| DAYTONA / KITACO 汎用 | 価格控えめ・旧車用に適 | 軽整備・補修向け |
🧮 オイルレベル(油面高さ)とセッティング
| パラメータ | 解説 | 効果 |
|---|---|---|
| 油面高め(例:100mm → 90mm) | オイル量を増やす | 最後の沈み込みを抑え、ストローク末期が硬くなる |
| 油面低め(例:100mm → 110mm) | オイル量を減らす | 全体が柔らかく、初期作動がしなやかになる |
💡 同じ番手でも油面調整で乗り味を微調整できるのがフォーク整備の奥深さです。
📜 フォークオイルの歴史的変遷
| 時代 | 主なオイル特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 1950〜1960年代 | 鉱物油ベース、粘度変化大 | 熱で減衰が安定せず、整備頻度多い |
| 1970〜1980年代 | 精製油+摩擦調整剤登場 | 安定化、街乗り整備性向上 |
| 1990年代 | シリコーン添加・高粘度安定化 | レースと市販の差が縮小 |
| 2000〜2020年代 | 合成油ベース(Full Synthetic) | 粘度安定・防錆・耐熱性大幅向上 |
| 現代(2025) | 電子制御サス専用低摩擦油 | 減衰バルブ自動制御対応、粘度変化制御型登場 |
🧠 まとめ
・番手(W)で粘度を選び、フォーク径・車格・用途に合わせて最適化する。
・φ41〜43mmクラスなら「10W(標準)」が基本。
・現代では「剛性よりもしなやかさ」「バランス設計」が主流。
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