ミシンの歴史(~1900年)‐文明を築いたのは蒸気機関、文化を支えたのはミシン

ミシンの歴史(~1900年)についてご紹介します。
縫い目の基礎 ― 本縫いと環縫い
ミシンで作られる縫い目は、本縫い(JIS記号301) と 環縫い(JIS記号101) の2種類しかありません。

この2種類はミシン誕生以来、約200年間増えることなく現在まで受け継がれてきました。
本縫い(JIS 301)
上糸(針糸)と下糸(シャトル内)を交差させて縫い目を形成します。 針が下降して上糸ループを作り、シャトル剣先がそのループを捕捉して下糸と交差します。
上糸(針糸)と下糸(シャトル内)を交差させて縫い目を形成します。 針が下降して上糸ループを作り、シャトル剣先がそのループを捕捉して下糸と交差します。
針上昇時に天秤で糸が回収・締結され、送りが働くことで1縫目が完了します。 初期は「長舟シャトル」を使用しましたが、高速化の要請により回転釜へと置き換わっていきました。
環縫い(JIS 101)
かぎ針で糸をループ状に掛け、連鎖的に縫い目を作ります。 代表例は一本糸のチェーンステッチ(単環縫い)です。チモニエの初期ミシンは環縫い方式を採用しておりました。
かぎ針で糸をループ状に掛け、連鎖的に縫い目を作ります。 代表例は一本糸のチェーンステッチ(単環縫い)です。チモニエの初期ミシンは環縫い方式を採用しておりました。
本縫いは織機の「飛杼」を、環縫いは編み機の「かぎ針」を着想源としたと考えられます。
ミシン発明の黎明期(~1800年代前半)
18世紀後半から19世紀初頭にかけて、トーマス・セント(1790年、環縫い)をはじめ多くの試作が登場しましたが、工場での本格的な実用化には至りませんでした。
一方で、編み機(リー、1589年)や飛杼(ジョン・ケイ、1733年)など関連技術は先行して発展しておりました。
産業革命との関係
紡績機・織機の発達により布の大量生産が実現しましたが、縫製は手作業が中心のままでした。 その結果、縫製は家庭内労働として女性に強く残りました。
このため一部には「ミシンは産業革命の失敗作」との評価もございますが、家庭労働の軽減や女性の地位向上に大きく貢献した点で、文化史的意義はきわめて大きいといえます。
実用化と社会的反発(1800年代前半)
1829年のチモニエ(環縫い)、1846年のホウ(本縫い)は実用水準に達しましたが、職を奪う懸念からラダイツ的反発に遭い、工場導入は進みませんでした。
普及と成功 ― シンガーの戦略(1850年代)
アイザック・M・シンガーは、ミシンを家庭用として位置づけ、割賦販売を導入しました。 これにより一般家庭が購入しやすくなり、ミシンは家庭の労働負担を減らし、女性の社会的自立を後押しする「文化機械」として受け入れられていきました。
技術的転換点
・ウォルター・ハント(1832年) 針先にメド(穴)を設けた本縫い方式を発明し、機械縫製の要を打ち立てました。
・アレン・B・ウィルソン(1851年) 回転釜を考案し、高速化・大型化の道を開きました。
この2つの発明が、現代ミシン技術の基盤となっています。
世界的普及と工業用ミシンの誕生(19世紀後半)
アメリカではシンガー、ホワイト、ニューホームなどが大量生産体制を確立しました。 ドイツでもアドラー、パフ、デュルコップ等が相次いで創業しました。
南北戦争(1861–65年)や普仏戦争(1870–71年)を背景に軍需が拡大し、工業用ミシンが急速に発達しました。 家庭用はシンガーが圧倒的シェアを確保し、欧州勢は工業用に活路を見出していきました。
ミシン関連主要発明一覧(~1900年)
| 年 | 人名 | 国 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1589 | ウィリアム・リー | 英 | 編み機を発明しました。 |
| 1733 | ジョン・ケイ | 英 | 織機「飛杼(flying shuttle)」を発明しました。 |
| 1755 | カール・フリードリッヒ・ワイゼンタール | 独 | ワイゼンタール針を発明しました。 |
| 1770 | ロバート・アルソップ | 英 | 衣服縫い用ミシンを考案しました。 |
| 1790 | トーマス・セント | 英 | 環縫い手回しミシンを発明しました。 |
| 1801 | ジョセフ・M・ジャカード | 仏 | ジャカード織機(紋織機)を発明しました。 |
| 1804 | バルサザール・クレムス | 独 | 世界最古の現存ミシンを製作しました。 |
| 1804 | トーマス・ストーン/ジェームズ・ヘンダーソン | 英 | 共同で環縫いミシンを発明しました。 |
| 1804 | ジョン・ダンカン | 英 | 枠付き刺繍機械を考案しました。 |
| 1807 | ヨーゼフ・マデルスペルガー | 墺 | 直線縫いミシンを発明しました。 |
| 1829 | ジョジュエ・アイルマン | 仏 | 刺繍機械を開発 |
| 1829 | バルテルミー・チモニエ | 仏 | 木製ミシンを製作しました。 |
| 1832 | ウォルター・ハント | 米 | 二本糸を使用する本縫いミシンを発明しました。 |
| 1841 | ニュートン・アーチボルト | 米 | ミシン針を開発 |
| 1846 | エリアス・ホウ | 米 | 本縫いミシンを発明しました。 |
| 1851 | アレン・B・ウィルソン | 米 | ロータリー・シャトルを発明しました。 |
| 1851 | W・O・グローバー | 米 | 二重環縫いミシンを発明しました。 |
| 1851 | アイザック・メリット・シンガー | 米 | 本縫いミシンを実用化しました。 |
| 1856 | ジェームス・E・A・キブス | 米 | 一本糸環縫いミシンを発明しました。 |
| 1858 | ライマン・R・ブレーク | 米 | 靴縫い工業用ミシンを開発 |
| 1862 | ゴードン・マッケー | 米 | 靴縫い工業用ミシンを改良しました。 |
| 1865 | ボナ | 仏 | 刺繍に環縫いミシンを応用しました。 |
| 1871 | チャールズ・グッドイヤー | 米 | 靴縫い工業用ミシンを発展させました。 |
| 1872 | レスリー | 米 | 回転釜を開発 |
| 1872 | W・ハウゼ | 米 | ウィルソン型改良ミシンを開発 |
| 1877 | ジョセフ・M・メロー | 米 | 縁かがりミシン(鉤針編み機)を発明しました。 |
| 1879 | チャールズ・フィッシャー | 米 | ジグザグ縫いの原理を提案しました。 |
| 1880 | シンガー社 | 米 | 半回転釜を発明しました。 |
| 1882 | ジョン・カイザー | 独 | ジグザグミシンを開発 |
| 1884 | J・ナイトリンガー | 独 | ジグザグミシンを開発 |
| 1889 | シンガー社 | 米 | 電動式ミシンを発売しました。 |
まとめ
・縫い目は本縫いと環縫いの2種類に集約されます。
・普及の決定打はシンガーの家庭用戦略と割賦販売でした。
・技術の要は針先メド(ハント)と回転釜(ウィルソン)です。
・産業革命の主役ではなかったかもしれませんが、文化的・社会的インパクトは極めて大きい機械でした。
・普及の決定打はシンガーの家庭用戦略と割賦販売でした。
・技術の要は針先メド(ハント)と回転釜(ウィルソン)です。
・産業革命の主役ではなかったかもしれませんが、文化的・社会的インパクトは極めて大きい機械でした。
名言 「文明を築いたのは蒸気機関、文化を支えたのはミシンです。」
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