ファミコンの始まり・任天堂初の家庭用ゲーム機登場
~ファミコン誕生前史~
今回は、ファミコン誕生のきっかけになった家庭用ゲーム機の開発物語についてご紹介します。
ファミコン誕生のきっかけになった家庭用ゲーム機?
そう『ファミコン』正式名は『ファミリーコンピュータ』だよ。
ファミコンは、任天堂から1983年発売された家庭用ゲーム機だね。
最終出荷台数は、世界で約6000万台。
すごい。
はじめて、おもちゃ屋で見たときは、衝撃的だったよ。
たしか、任天堂のテニスゲームだったような?
そう、ところが1980年代はじめの頃の任天堂は、携帯ゲームのゲームウオッチが大ヒットするんだけど。
ゲーム業界では、おもしろいゲームを作る『玩具メーカー』としか見られていなかったんだよ。
今の任天堂じゃ、想像できないね。
そんな任天堂が、突然、高性能な家庭用ゲーム機『ファミリーコンピュータ(ファミコン)』を発売するんだ。
このファミコンの登場で、家庭用ゲーム市場が誕生し、社会現象にまでなってしまうんだ。
ここで、ひとつの疑問が思い浮かぶんだよ。
疑問?
そう
『なぜ任天堂は社会現象まで引き起こした、家庭用ゲームを開発することができたのか?』
『玩具メーカーと言われていた任天堂が、高性能な家庭用ゲーム機を開発できるノウハウをどのように蓄積していったのか?』
たしかにそうだよね。
それでは、ファミコン誕生のきっかけになった、任天堂の1970年代から見てゆこう。
見てゆこう。
1970年代の任天堂開発部
1970年代当時の任天堂は、家庭向け玩具や業務用射撃ゲーム機などのレジャー施設などを手がけていたんだ。
この頃、任天堂ゲーム開発の生みの親となる横井軍平さんの登場によって、
任天堂におもちゃ玩具を開発する、『開発部』が新設されたんだ。
そして1971年には、後にファミコンの生みの親となる上村雅之さんが入社するんだよ。
そしてこの頃、任天堂の開発スタッフにはきっちり決まった目標はなかった。
開発スタッフ個人が適当にアイデアを出し、
それが会社の考えに合えば商品になるという時代だった。
牧歌的な時代だったんだね。
そんな1976年のある日
娯楽産業は、すぐお客さんに飽きられてしまう。
新しいヒット商品を探さないとなー。
上村さんは、新しいゲームのアイディアを探している最中だったんだ。
おもちゃ玩具は、大ヒットしても半年で直ぐに子供たちに飽きられてしまうんだ。
だから、次々と新しいアイディアを考えてヒット商品を作らなければならなかったんだよ。
何かないかなー。
るるるるるる るるるるるる るるるるるる
ん、電話?
はい、任天堂開発部の上村です。
いつもお世話になっております。三菱電機伊丹事業所です。上村さんですか?
はい、そうです。
実は、上村さんにご相談があるのですが?
相談ですか?なんでしょうか?
・・・・・・
弊社とゲームを共同開発しておりました取引先が倒産しましてね。
テレビ・ゲーム機用のLSIが、大量に残ってしまったんです。
家庭用ゲーム機を商品化する気はないですか?
当時、三菱電機は、
日本の電卓メーカーだった、システックは
三菱電機にゲーム用LSIの開発依頼をしていたんだ。
ところが1976年夏にシステックが倒産してしまう。
顧客を失った三菱電機は、
業務用レジャー施設で縁のあった任天堂に話を持ちかけたんだ。
この三菱電機伊丹事業所との出会いが、後に『ファミリーコンピューター』誕生につながってゆくんだよ。
任天堂・家庭用ゲーム市場に参入
三菱電機からの家庭用ゲーム機を商品化の提案は、
任天堂の開発部にとっては渡りに船だったんだ。
家庭用ゲーム機は、おもしろそうだな。
これは、新しい市場開拓になるのでは。
山内社長に相談してみよう。
この頃の任天堂の社長は、その後『世界の任天堂』へと押し上げることになる
『任天堂・中興の祖』山内社長だよ。
おー、組長。
任天堂社長室
山内社長、家庭用ゲーム機の開発してもいいですか?
・・・・・・
いいよ
こうして、任天堂開発部は、三菱電機と
家庭用ゲーム機開発を進めることになるんだ。
1977年家庭用ゲーム機発売
こうして任天堂は1977年『任天堂』初の家庭用ゲーム機
『カラーテレビゲーム6』と『カラーテレビゲーム15』を売り出すことになるんだ。
これをきっかけに、
LSIに精通するパートナ『三菱電機』と
共同で次々とゲーム機を発売してゆくんだ。
任天堂・技術の壁
三菱電機と共同開発した、家庭用ゲーム機は100万台突破する大ヒットとなる。
これに勢いづいた、任天堂は次々と家庭用ゲーム機を発売することになるんだ。
だけど、ここで壁にブチ当たるんだ。
壁?
前回ヒットした、家庭用ゲーム機は、
LSIの設計開発が、完成していた商品だったんだ。
ということは、任天堂開発部は、
デザインと販売促進すればよかっただけなのか。
そうなんだ。
けれども、今回任天堂開発部が、企画している『カーレース 112』というゲームは、任天堂のオリジナルゲームなんだ。
今回からは、企画・販売だけでなく、設計・製造管理も必要になってくるんだよ。
ところが、任天堂には、LSIに詳しい人材がまだ育っていなかったんだ。
開発部の上村さんは、元シャープの出身だから電子機器には詳しかったんだけど。
LSIなどの半導体設計は、専門ではなかったんだよ。
ましてや、上村さんの部下達はまったくの素人も同然。
新しく開発する、『カーレース 112』を完成させるには、
短期間で、部下たちを半導体設計ができる人材に育てなければならなくなったんよ。
大丈夫かなー
うーむ
我が社には、半導体(LSI)を熟知している人材が育っていない。
おもしろいゲーム企画ができても、
具体的に、回路設計できる人材を育てなければ商品が開発できないぞ。
困ったなー
・・・・・・・
そうだ。
任天堂開発部会議
我が社が、家庭用ゲーム機を開発できるようにするには、
我々は、もっと半導体(LSI)について学ばねばならない。
これから我々は、ゲーム企画、設計、製造管理の
ノウハウを勉強する必要がある、
と言うことで、
君たちは、明日から三菱電機さんのところで修行して来なさい。
了解しましたー
こうして、任天堂開発部の社員は、
三菱電機から安藤対(LSI)について学ぶことになったんだ。
半導体(LSI)虎の巻
新しい家庭用ゲーム機の『カーレース 112』で
任天堂の開発者は、三菱電機の技術者から
半導体(LSI)の基礎から回路の設計方法などさまざまなことを学ぶことになるんだ。
幸いにも、任天堂社員の修行先である三菱電機・伊丹事業所は、
任天堂本社の京都から、高速道路で1時間ほどで訪問できる伊丹にあったんだよ。
任天堂の社員は、半導体の技術を学ぶために毎日のように
三菱電機・伊丹事業所へ通い続けたんだ。
伊丹参りだね。
そして、任天堂の技術者が設計した回路が、うまく動作しないときには、
三菱電機の技術者が任天堂まで出かけて、調整してくれることもあったんだ。
任天堂の社員は、4カ月ほどは三菱電機・伊丹事業所に通いづめ、
1978年、ついに、任天堂初のオリジナル家庭用ゲーム機
『カーレース 112』を発売したんだ。
おーーー
この時、任天堂の社員に
半導体基礎や回路設計など教えてくれたのが、
三菱電機の半導体・ロジック設計のエースだった。八木さんだったんだ。
この八木さんとの出会いが、後にファミコンを成功に導くことになるんだよ。
運命の出会いだね。
任天堂初の自力設計『ゲームブロック崩し』
そして任天堂・開発部は、次のゲームとして
家庭用ゲーム機『ブロック崩し』の開発に取り掛かったんだ。
『カーレース 112』の開発で、
家庭用ゲーム機開発の技術を蓄積した任天堂の社員は、
今度は、次のゲーム機『ブロック崩し』では、
ゲームの企画をもとに自力で回路図作り上げられるようになっていた。
『ブロック崩し』の開発手順は、
まずは、任天堂でゲームを企画して、ゲームデザインを作成する。
それから、任天堂開発部が、ゲームデザインを元にLSLの回路設計をする。
そして、任天堂が作成した回路図を三菱電機に持って行き、LSIのパターン設計に入る。
当時はまだCADを使っていなかったから、OR回路やインバータといった回路のセル・パターンを一つひとつ方眼紙に書き、それを組み合わせて設計を進めていたんだよ。
すごい職人の世界だね。
そして、LSLが三菱電機で製造され、同工場でゲーム機本体とLSIを組み合わせて
家庭用ゲーム機『ブロック崩し』の完成。
この頃には、任天堂開発部でゲームデザインから回路設計まで出来るようになっていたんだ。
この家庭用ゲーム機『ブロック崩し』は、任天堂にとって
専用LSIを使った家庭用ゲーム機の集大成ともいえる製品だったんだよ。
そして、1979年に『ブロック崩し』発売されるんだ。
この家庭用ゲーム機開発こそ、後に大ヒット商品となる
『ファミリーコンピューター』発売へとつながるんだよ。
おーーー
おーーーー 宮本さん
当時、宮本さんは、まだ工業デザイナーで
ゲームのデザインはしてなかったんだ。
まさか、その後スーパーマンになるとは思いも寄らないね。
スペースインベーダーの逆襲
ところが、家庭用ゲーム機の大ヒットで、家庭用ゲーム機市場に大きな可能性を感じた任天堂開発部に、大きな衝撃が走るんだよ。
大きな衝撃?
そう、それこそタイトーが発売したアーケードゲーム機。
『スペースインベーダー』なんだ。
1970年代後半に、社会現象にもなった
『スペースインベーダー』?
そう、次回は『ファミコン誕生』に大きな影響を与えたゲーム
『スペースインベーダー』の登場と、任天堂開発部の挑戦をご紹介します。
ご閲覧ありがとうございました。
『ファミコン』誕生前史シリーズ