食文化・料理

酵素による酸化反応 ― 茶葉が自ら変わる仕組み

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酵素による酸化反応 ― 茶葉が自ら変わる仕組み

摘んだ葉を広げ、そっと手で揉む。 断面が空気に触れたところから、 緑がゆっくりと赤みを帯びていく。 それは外から加えた力ではなく、葉の内側の反応でした。

酵素による酸化反応とは

酵素による酸化反応とは、 茶葉自身が持つ酵素が、空気中の酸素を利用して成分を変化させる反応 を指します。 微生物は関与せず、 反応の主体は茶葉内部に元々存在する酵素です。 茶の世界では慣習的に「発酵」と呼ばれますが、 正確には 酵素酸化 です。

反応が起きる条件

通常、茶葉の中では、 酵素と反応物質(主にカテキン)は 細胞構造によって分離されています。 以下の操作で条件が揃うと、反応が始まります。
・萎凋(しおらせる)
・揉捻(もむ・潰す)
・切断
細胞が壊れ、 酸素が入り込むことで、 酵素が働き出します。

反応の流れ(簡略)

段階 内部で起きていること
細胞破壊 酵素と成分が接触
酸素供給 空気中の酸素が反応に参加
酸化 カテキンが別の物質へ変化
重合 色・味・香りが変わる

味と色の変化

酵素酸化が進むと、 茶葉の性質は次のように変わります。
・色:緑 → 赤褐色
・味:渋味減少、甘み・コク増加
・香り:青臭さ減少、熟香生成
これは劣化ではなく、 方向づけられた変化 です。

茶の種類と制御の違い

茶の種類 酵素酸化の扱い 結果
緑茶 蒸し・釜炒りで即停止 青さを保つ
烏龍茶 途中まで進めて止める 香り重視
紅茶 十分に進める 赤色・コク

止めるという技術

酵素反応は、 放置すれば進み続けます。 そこで行われるのが 加熱(殺青) です。 蒸す・炒ることで酵素を失活させ、 反応を止めます。 製茶とは、 反応を起こす技術ではなく、 反応をどこで止めるかの技術 です。

微生物発酵との違い

酵素酸化は、 茶葉が生きている間に起こる反応です。 後発酵茶のように、 微生物が主役になる場合とは、 仕組みも制御方法も異なります。 両者は混同されがちですが、 まったく別の現象です。

まとめ

酵素による酸化反応は、 茶葉が本来持つ変化の力です。 それを 止めるか、 使うか、 どこまで許すか。 その判断が、 緑茶・烏龍茶・紅茶を分けました。 製茶とは、 葉の反応を敵にすることではなく、 反応と折り合いをつける技 です。
「反応を知ることは、止めどきを知ることだ」

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