「アセトン（Acetone, CH₃COCH₃）」‐化学は戦争を生みもしたが、平和を支える道具にもなる

・自然界にも微量に存在（発酵や代謝の副産物）
・古代文明では「独立した化学物質」として認識されていなかった。
・中世ヨーロッパの錬金術師が乾留実験で木酢液などから類似物質を得ていたと考えられる。

 ・1606年 オランダの医師・化学者ジャン・バプティスト・ファン・ヘルモントが「木の乾留」によりアセトンを観察。

・1832年 ドイツの化学者 リービッヒ（Justus von Liebig）と フランスの化学者 デュマ（Jean-Baptiste Dumas）がアセトンの分子式を決定。

・19世紀後半 石炭乾留副産物（コールタール化学）の一部として生産開始。

  第一次世界大戦
・アセトンは「無煙火薬（コルダイト）」の製造に必須。
・イギリスで需要が急増し不足。
・この時、ハイム・ヴァイツマン（後のイスラエル初代大統領）が、細菌（クロストリジウム属）を用いた 発酵法によるアセトン生産（Weizmann process） を開発。
・この技術で戦時需要を支えた。

石油化学の発展
・アセトンは石油クラッキングから得られるプロピレンを酸化して合成されるように。
・発酵法から石油化学法へ完全に移行。

用途拡大
・塗料・接着剤・プラスチック（アクリル樹脂の原料）
・セルロース系樹脂や繊維の加工
・医療用溶剤（消毒前の脱脂、器具洗浄）

 日常利用
・マニキュア除光液の主成分
・ABS樹脂やPLA樹脂（3Dプリンタ）の表面仕上げ（スムージング）

産業用途
・アクリル樹脂（PMMA）、ビスフェノールA（→ポリカーボネート原料）製造の基幹原料

医療分野
・血中アセトン濃度は糖尿病性ケトアシドーシスの指標（生体代謝産物として再注目）

・エタノール 古代から酒として利用 → 医療・燃料へ
・IPA 1920年代に石油化学から誕生 → 電子機器洗浄に不可欠
・アセトン 産業革命以降 → 戦争と石油化学により大量生産・多用途化