イギリスのエリート教育の歴史
イギリスのエリート教育は、中世の大学設立から始まり、パブリックスクール（名門私立校）、オックスブリッジ（オックスフォード大学とケンブリッジ大学）、さらに近代の官僚・政治家養成機関へと発展しました。エリート教育はイギリス社会の階級構造と深く結びつき、政治・経済・学問の分野に大きな影響を与えてきました。
| 時代 | 主な特徴と教育機関 |
|---|---|
| 中世 （12〜15世紀） |
– オックスフォード大学（12世紀末）：神学・哲学・法学中心 – ケンブリッジ大学（1209年）：貴族・王族の子弟教育 – カレッジ制の確立 |
| 近世 （16〜18世紀） |
– 大学改革：ラテン語・ギリシャ語・哲学・数学・自然科学重視 – パブリックスクールの発展：イートン・カレッジ、ウィンチェスター・カレッジ、ラグビー校 – クラシカル・エデュケーション中心 |
| 19世紀 | – パブリックスクール改革：上流中産階級も対象に – スポーツマンシップと人格形成重視 – 帝国官僚養成：植民地行政官の育成 – インド高等文官試験導入（1869年） |
| 20世紀 | – 1944年教育法：無償中等教育導入 – グラマー・スクールの拡充 – コンプリヘンシブ・スクールの導入 – ローズ奨学制度（1902年）：国際的な人材育成 |
| 21世紀 | – オックスブリッジ：政治・経済界への影響力継続 – 名門パブリックスクール：特権階級向け傾向強化 – エリート教育のグローバル化 – 教育機会の格差と奨学金制度の拡充 |
1. 中世（12〜15世紀） 大学の誕生と聖職者教育
(1) オックスフォード大学（12世紀末）
・1096年頃にはすでに存在していたとされる。
・1167年、ヘンリー2世がイギリス人学生のパリ大学留学を禁止したことを契機に発展。
・神学・哲学・法学が中心で、聖職者や王室高官を養成。
・カレッジ制が確立し、貴族の子弟が入学するようになる。
・1096年頃にはすでに存在していたとされる。
・1167年、ヘンリー2世がイギリス人学生のパリ大学留学を禁止したことを契機に発展。
・神学・哲学・法学が中心で、聖職者や王室高官を養成。
・カレッジ制が確立し、貴族の子弟が入学するようになる。
(2) ケンブリッジ大学（13世紀）
・1209年、オックスフォード大学の一部の学者が移り住み設立。
・オックスフォードと並び、イギリスのエリート教育の中心に。
・貴族や王族の子弟の教育機関として機能。
・1209年、オックスフォード大学の一部の学者が移り住み設立。
・オックスフォードと並び、イギリスのエリート教育の中心に。
・貴族や王族の子弟の教育機関として機能。
2. 近世（16〜18世紀） ルネサンスと貴族教育の確立
(1) 人文主義と大学改革（16世紀）
・ルネサンスの影響で、ラテン語・ギリシャ語・哲学・数学・自然科学が重視。
・ヘンリー8世（在位1509-1547年）がオックスフォードとケンブリッジを改革。
・国王直属の教育機関として、王政と結びついたエリート教育が進む。
・ルネサンスの影響で、ラテン語・ギリシャ語・哲学・数学・自然科学が重視。
・ヘンリー8世（在位1509-1547年）がオックスフォードとケンブリッジを改革。
・国王直属の教育機関として、王政と結びついたエリート教育が進む。
(2) パブリックスクールの発展（17〜18世紀）
・貴族や上流階級の子弟が通う名門私立校（パブリックスクール）が登場。
・貴族や上流階級の子弟が通う名門私立校（パブリックスクール）が登場。
代表的な学校
・イートン・カレッジ（1440年創設）
・ウィンチェスター・カレッジ（1382年創設）
・ラグビー校（1567年創設）
・クラシカル・エデュケーション（ラテン語・ギリシャ語・修辞学）が中心。
・軍人・政治家・学者の養成機関として発展。
・イートン・カレッジ（1440年創設）
・ウィンチェスター・カレッジ（1382年創設）
・ラグビー校（1567年創設）
・クラシカル・エデュケーション（ラテン語・ギリシャ語・修辞学）が中心。
・軍人・政治家・学者の養成機関として発展。
3. 19世紀 産業革命とエリート教育の再編
(1) パブリックスクール改革
・産業革命後、貴族だけでなく上流中産階級もエリート教育を受けるように。
・19世紀後半、トーマス・アーノルド（ラグビー校校長）が「スポーツマンシップと人格形成」を重視した教育を導入。
・スポーツ（ラグビー、クリケットなど）がエリート教育の一環に。
・産業革命後、貴族だけでなく上流中産階級もエリート教育を受けるように。
・19世紀後半、トーマス・アーノルド（ラグビー校校長）が「スポーツマンシップと人格形成」を重視した教育を導入。
・スポーツ（ラグビー、クリケットなど）がエリート教育の一環に。
(2) 帝国官僚養成 ・ヴィクトリア時代（1837-1901年）
大英帝国の拡大に伴い、植民地統治のための官僚養成が強化。
・オックスフォード・ケンブリッジの卒業生がインド、アフリカなどの植民地行政官として派遣される。
・1869年、インド高等文官試験（Indian Civil Service Exam）が導入され、競争試験による官僚選抜が始まる。
大英帝国の拡大に伴い、植民地統治のための官僚養成が強化。
・オックスフォード・ケンブリッジの卒業生がインド、アフリカなどの植民地行政官として派遣される。
・1869年、インド高等文官試験（Indian Civil Service Exam）が導入され、競争試験による官僚選抜が始まる。
4. 20世紀 民主化と教育制度の変革
(1) 労働党政権と教育改革（1940年代〜）
・第二次世界大戦後、教育の民主化が進み、エリート教育の独占を解消する動き。
・1944年教育法（バトラー法）により、無償の中等教育が導入。
・グラマー・スクール（選抜制公立校）が拡充され、学力に応じたエリート養成へ。
・第二次世界大戦後、教育の民主化が進み、エリート教育の独占を解消する動き。
・1944年教育法（バトラー法）により、無償の中等教育が導入。
・グラマー・スクール（選抜制公立校）が拡充され、学力に応じたエリート養成へ。
(2) グラマー・スクールとコンプリヘンシブ・スクール ・グラマー・スクール（Grammar Schools） 伝統的な選抜制中等教育機関
・コンプリヘンシブ・スクール（Comprehensive Schools） 非選抜制の公立学校。
・1960年代以降、教育の機会均等を重視し、グラマー・スクールは減少。
・コンプリヘンシブ・スクール（Comprehensive Schools） 非選抜制の公立学校。
・1960年代以降、教育の機会均等を重視し、グラマー・スクールは減少。
(3) ローズ奨学制度（1902年設立）
・セシル・ローズが設立した奨学金制度。
・世界中の優秀な学生をオックスフォード大学に招く。
・ビル・クリントン（元米大統領）、ボブ・ホーカー（元豪首相）などの著名な卒業生。
・セシル・ローズが設立した奨学金制度。
・世界中の優秀な学生をオックスフォード大学に招く。
・ビル・クリントン（元米大統領）、ボブ・ホーカー（元豪首相）などの著名な卒業生。
5. 21世紀のエリート教育 グローバル化と格差
(1) 現代のオックスブリッジ
・依然として、政治・官僚・経済界に大きな影響力を持つ。
・イギリスの首相経験者の多くがオックスフォード・ケンブリッジ出身（ボリス・ジョンソン、デービッド・キャメロンなど）。
・国際学生の受け入れが進み、エリート教育のグローバル化。
・依然として、政治・官僚・経済界に大きな影響力を持つ。
・イギリスの首相経験者の多くがオックスフォード・ケンブリッジ出身（ボリス・ジョンソン、デービッド・キャメロンなど）。
・国際学生の受け入れが進み、エリート教育のグローバル化。
(2) 名門パブリックスクール
・イートン校（ウィリアム王子、ハリー王子、ボリス・ジョンソン）
・ハーロー校（ウィンストン・チャーチル）
・学費が高騰し、特権階級向けの傾向が強まる。
・イートン校（ウィリアム王子、ハリー王子、ボリス・ジョンソン）
・ハーロー校（ウィンストン・チャーチル）
・学費が高騰し、特権階級向けの傾向が強まる。
(3) 費用と機会格差
・オックスフォード・ケンブリッジは学力だけでなく、家柄や経済力の影響が大きい。
・奨学金制度の拡充とともに、貧困層の学生向け支援も増加。
・オックスフォード・ケンブリッジは学力だけでなく、家柄や経済力の影響が大きい。
・奨学金制度の拡充とともに、貧困層の学生向け支援も増加。
6. まとめ イギリスのエリート教育の変遷
✅ 中世 オックスフォード・ケンブリッジ設立、聖職者・王族向けの教育。
✅ 近世 パブリックスクールの発展、貴族のエリート教育が確立。
✅ 19世紀 産業革命と帝国官僚養成、グラマー・スクールの台頭。
✅ 20世紀 教育の民主化、コンプリヘンシブ・スクールの拡充。
✅ 21世紀 グローバル化と格差の問題。
✅ 近世 パブリックスクールの発展、貴族のエリート教育が確立。
✅ 19世紀 産業革命と帝国官僚養成、グラマー・スクールの台頭。
✅ 20世紀 教育の民主化、コンプリヘンシブ・スクールの拡充。
✅ 21世紀 グローバル化と格差の問題。
イギリスのエリート教育は、長い歴史を通じて「学力」「家柄」「社会階層」が絡み合いながら発展し、現在もその影響を色濃く残しています。
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