中国：数学の歴史
中国の数学は、実用性に根ざした発展を遂げ、古代から独自の計算方法や数体系を生み出しました。特に、農業、測量、天文学、商業などの分野で発展し、後の数学の基礎を築きました。以下、中国数学の歴史を時代ごとに詳しく解説します。
| 時代区分 | 時期 | 主な成果・特徴 | 代表的な数学書・人物と業績 |
|---|---|---|---|
| 古代 | 紀元前1000年～紀元後3世紀 | 周代（紀元前1000年～紀元前221年） – 十進法の使用 – 算木を用いた計算方法 – 『周髀算経』：測量術、ピタゴラスの定理に相当する記述 漢代（紀元前206年～紀元後220年） – 『九章算術』：代数学、幾何学、測量、商業数学を含む – 一次連立方程式の解法（行列の基礎） – 負の数の概念 – 『孫子算経』：中国剰余定理を記述 |
– 『周髀算経』：太陽の影を使った測量術 – 『九章算術』：最も影響力のある数学書 – 『孫子算経』：「合同式」の問題を含む |
| 中世 | 4世紀～13世紀 | 南北朝～唐代（4～9世紀） – 『算経十書』：中国数学の基礎となる書物 – 僧一行：円周率を小数点以下7桁まで計算 宋代（10～13世紀） – 賈憲：賈憲三角形（パスカルの三角形の原型） – 秦九韶：高次方程式の数値解法（ホーナー法に相当）、剰余定理の応用 – 楊輝：楊輝三角形、魔方陣（マジックスクエア）の発展 |
– 『算経十書』：唐代初期に編纂された基礎的数学書 – 賈憲：賈憲三角形を考案 – 秦九韶：高次方程式解法とゼロ記号導入 |
| 近世 | 14世紀～19世紀 | 明代（14～17世紀） – 珠算（そろばん）の普及 – 『算法統宗』（1592年）：珠算理論書、平方根・立方根の計算法を記述 清代（17～19世紀） – 西洋数学の流入（マテオ・リッチらによる影響） – 微積分概念が伝来 |
– 程大位：『算法統宗』で珠算を体系化 – マテオ・リッチ：ヨーロッパ数学を中国に紹介 |
1. 古代（紀元前1000年～紀元後3世紀）
(1) 周代（紀元前1000年～紀元前221年）
・十進法の使用 中国は早くから十進法を採用し、桁ごとに記数する方式を使用しました。
・算木（計算用の棒） 紀元前4世紀頃には、算木と呼ばれる棒を使った計算方法が確立していました。
『周髀算経（しゅうひさんけい）』（紀元前1000年頃）
・太陽の影を使って高さを測る方法（測量術）
・三角形の性質に関する記述（ピタゴラスの定理に相当）
・十進法の使用 中国は早くから十進法を採用し、桁ごとに記数する方式を使用しました。
・算木（計算用の棒） 紀元前4世紀頃には、算木と呼ばれる棒を使った計算方法が確立していました。
『周髀算経（しゅうひさんけい）』（紀元前1000年頃）
・太陽の影を使って高さを測る方法（測量術）
・三角形の性質に関する記述（ピタゴラスの定理に相当）
(2) 漢代（紀元前206年～紀元後220年）
『九章算術』（紀元前200年頃）
・最も影響力のある数学書で、代数学、幾何学、測量、商業数学などを含む。
・一次連立方程式の解法（行列の基礎となる方法）を記述。
・負の数の概念を使用。
『孫子算経』（3世紀）
・中国剰余定理（合同式の基礎）を記述。
・「ある数を3で割ると2余り、5で割ると3余り、7で割ると2余る。この数はいくつか？」という問題を含む。
『九章算術』（紀元前200年頃）
・最も影響力のある数学書で、代数学、幾何学、測量、商業数学などを含む。
・一次連立方程式の解法（行列の基礎となる方法）を記述。
・負の数の概念を使用。
『孫子算経』（3世紀）
・中国剰余定理（合同式の基礎）を記述。
・「ある数を3で割ると2余り、5で割ると3余り、7で割ると2余る。この数はいくつか？」という問題を含む。
2. 中世（4世紀～13世紀）
(1) 南北朝～唐代（4～9世紀）
・『算経十書』（7世紀） 中国数学の基礎となる書物。
唐代の数学者・僧一行（いっこう）（8世紀）
・円周率の精密な計算（小数点以下7桁まで求める）
・『算経十書』（7世紀） 中国数学の基礎となる書物。
唐代の数学者・僧一行（いっこう）（8世紀）
・円周率の精密な計算（小数点以下7桁まで求める）
(2) 宋代（10～13世紀）
賈憲（かけん）（11世紀）
・賈憲三角形（パスカルの三角形の原型）を考案。
秦九韶（しんきゅうしょう）（13世紀）
・高次方程式の数値解法を考案（ホーナー法に相当）。
・剰余定理の応用を発展させる。
楊輝（ようき）（13世紀）
・楊輝三角形（パスカルの三角形）の研究。
・魔方陣（マジックスクエア）の発展。
賈憲（かけん）（11世紀）
・賈憲三角形（パスカルの三角形の原型）を考案。
秦九韶（しんきゅうしょう）（13世紀）
・高次方程式の数値解法を考案（ホーナー法に相当）。
・剰余定理の応用を発展させる。
楊輝（ようき）（13世紀）
・楊輝三角形（パスカルの三角形）の研究。
・魔方陣（マジックスクエア）の発展。
3. 近世（14世紀～19世紀）
(1) 明代（14～17世紀）
珠算（そろばん）の普及
・16世紀頃から「算盤」が一般化し、商業数学が発展。
『算法統宗』（1592年）（程大位）
・珠算の理論書。
・乗除法、平方根、立方根の計算方法を記述。
珠算（そろばん）の普及
・16世紀頃から「算盤」が一般化し、商業数学が発展。
『算法統宗』（1592年）（程大位）
・珠算の理論書。
・乗除法、平方根、立方根の計算方法を記述。
(2) 清代（17～19世紀）
・西洋数学の流入（マテオ・リッチらの影響）
・ヨーロッパの数学書が翻訳され、中国数学に影響を与える。
・微積分の概念が伝来。
・西洋数学の流入（マテオ・リッチらの影響）
・ヨーロッパの数学書が翻訳され、中国数学に影響を与える。
・微積分の概念が伝来。
4. まとめ
✅ 古代中国の数学は実用性を重視し、測量や商業に役立つ技術が発展。
✅ 『九章算術』や『孫子算経』などの数学書が数学の発展に貢献。
✅ 剰余定理、行列計算、負の数の概念など、先進的な数学を生み出した。
✅ 宋代には高次方程式やパスカルの三角形の原型が研究された。
✅ 明代以降は珠算が発達し、商業数学が普及。
✅ 『九章算術』や『孫子算経』などの数学書が数学の発展に貢献。
✅ 剰余定理、行列計算、負の数の概念など、先進的な数学を生み出した。
✅ 宋代には高次方程式やパスカルの三角形の原型が研究された。
✅ 明代以降は珠算が発達し、商業数学が普及。
中国数学は、西洋数学と異なる独自の発展を遂げ、近代数学に多大な影響を与えました。
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